本間宗究(本間裕)のコラム

* 直近のコラムは、こちら

2025.4.12

デジタル通貨の消滅メカニズム

今回の金融大混乱については、1600年前の「西ローマ帝国の崩壊時」を超える「人類史上、最大の金融危機」とも思われるために、現時点で必要なことは、「歴史の証言者の一人」として、「どのようなメカニズムで、これほどまでの大混乱が発生したのか?」を書き留めておく必要性があるようにも感じている。別の言葉では、「デジタル通貨の誕生と崩壊」という「人類が初めて経験した出来事」に関して、「どのようなメカニズムが働いたのか?」を考えることである。

そして、この点に関して、最も大きな役割を果たしたのが、ご存じのとおりに、「1971年のニクソンショック」であり、この時から、「世界の通貨や貨幣は、影も形も存在しないデジタル通貨へと変化を始めた状況」だったことも理解できるのである。しかも、「約50年」という期間にわたり、「貨幣や通貨の大膨張」が発生した結果として、現在においても、「キャッシュレス社会の到来」に対して、ほとんどの人が疑問を抱いていない状況ともいえるのである。

しかし、一方で、「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱)」から始まった変化は、「仮想現実のデジタル通貨の海」における「金融大地震」であり、また、「インフレの大津波」でもあったが、実際には、「この事実に気づく人がほとんどいなかった」という状態だったことも見て取れるのである。別の言葉では、「債券や不動産、そして、株式のバブル」に酔いしれて、「どれほどの二日酔いが、世界中の人々を悩ませるのか?」などについては、全く考えが及ばなかった状況のことである。

その結果として、現在では、「バブル崩壊の悪影響」が、急激に世界の金融市場を支配し始めたわけだが、実際には、「バランスシートの非対称性」、すなわち、「資産価格には変動があるものの、負債については一定の金額である事実」により、「債券から不動産、そして、株式」という順番で、バブルが崩壊し、世界の資金が移転を繰り返したのである。そして、現在では、「デジタル通貨の海から実物資産の陸」へと世界の資金が移動を始めたわけだが、このことが意味することは、「日本の3・11大震災」の時のように、「波がリアス式海岸へと流れ込み始めた段階」のようにも感じられるのである。

具体的には、「大量の海水(紙幣)が、狭くて浅い海岸の奥地(実物資産の市場) にまで、あっという間に到達する展開」であり、結果としては、「1991年のソ連」と同様に「インクが無くなるまで大量の紙幣が印刷される状況」を想定している。