
本間宗究(本間裕)のコラム
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2025.4.22
西洋諸国のスタグフレーション
現在、世界の金融市場で危惧されていることは、「西洋諸国がスタグフレーションに陥る可能性」とも言われているが、具体的には、1970年代のように、「スタグネーション(景気の低迷)」と「インフレーション(通貨価値の下落)」が同時に西洋諸国を襲う可能性である。ただし、この時の問題点としては、「既存の経済学」で信じられている「景気が良くなればインフレになり、景気が悪化すればデフレになる」というような「短絡的な考え方」のみならず、「現在、どのような商品が世界に流通し、また、どのような通貨で購入されているのか?」が理解されていない状況も指摘できるのである。
また、より重要な点としては、「景気悪化がもたらす税収減」や「国家債務の増加がもたらす通貨価値の下落」などが考慮されていない事実も挙げられるために、今後は、「1970年代のスタグフレーション」とは違った展開になるものと想定されるのである。つまり、当時の状況としては、「米国における国家債務のGDP比が約30%」というように、「金利を急上昇させても、利払い費用の問題に悩まされることはなかった」という事実が見て取れるのである。
しかし、現在では、「米国における国家債務のGDP比が約130%」、そして、「日本では約250%」というように、「金利上昇がもたらす利払い費用増加に対して、国家財政が悲鳴を上げている状況」とも理解できるのである。別の言葉では、「国債の買い手」が見つからなくなり、間もなく、「西洋諸国全体で、マネタイゼーション(債務の貨幣化)が実施される可能性」が高まっている可能性のことである。
そのために、現時点で必要なことは、「景気の悪化が、今後、どれほど税収の減少につながるのか?」という点のみならず、「どの主体に、現在、国債の買い余力が残されているのか?」を考えることとも言えるのである。つまり、「4月の第二週に発生したヘッジファンドのベイシス取引における問題」に関して、「この取引が、民間部門における国際買い付けの最終手段だった可能性」を考慮することである。
そして、このような認識のもとに、依然として水面下に隠れている「約600兆ドルのOTCデリバティブ」に対して、思いを巡らすことが求められているものと感じているが、その理由としては、最近、「IMF(国際通貨基金)」や「JPモルガンのダイモンCEO」などが危惧し始めている「世界的な金融大混乱」、あるいは、「想定外の大事件の発生」などが挙げられるものと考えている。
2025.4.24
スローモーションの脱線列車
現在の世界的な金融システムについては、「スローモーションの脱線列車」に例えられるケースが増えているが、この点については、まさに「言い得て妙」の状況のようにも感じている。つまり、現時点では、「世界の金融システムが崩壊を始めている段階」、そして、「多くの人々が不安や違和感を覚えている状況」でありながらも、いまだに、「はっきりとした形での列車脱線が発生していない状態」とも想定されるからである。
別の言葉では、「金融システムの崩壊を、コマ送りのスピードが速まりつつある状態で見ているような状況」のことでもあるが、このことが意味することは、間もなく、「列車の脱線と停止」を意味する「金融システムの完全崩壊」が発生する可能性とも思われるのである。つまり、「炎上中の金融ツインタワー」である「約600兆ドルのOTCデリバティブ」と「約320兆ドルもの世界的な債務残高」が、今後数か月間のうちに、音を立てて崩れ始める可能性のことである。
そして、この時の注意点としては、「今までに積み上がった世界の資産と負債」に関して、「負債の無価値化が、同時に、資産の無価値化をもたらす可能性」であり、実際には、「紙切れとなった世界の通貨が、一斉に、実物資産に流れ込む可能性」である。つまり、本来の「マネー」だった「金(ゴールド)」に関して理解できることは、「過去100年間が、クレジット(信用)による資産と負債の急増が見られた状況」でもあるが、今後の展開としては、「無価値となる紙幣が大量発行されることにより、今まで価値のある資産と見なされていた商品に資金が回らなくなる可能性」である。
より具体的には、今までの展開だった「分業化がもたらした共同体の大膨張」、および、「産業構造の複雑化」に関して、今後は、「共同体の大収縮」や「基本的な産業への資金的な復帰」が始まる可能性も想定されるのである。つまり、「貨幣残高の実質的な大収縮」により、今後は、「必要とされる産業への資金回帰」が急速に発生するものと思われるが、実際には、すでに始まった「農産物などの価格上昇」のことである。
しかも、これほどまでの「金融面における地殻大変動」については、過去の例を遡ると、「1600年前の西ローマ帝国崩壊時」にまで行きつかざるを得ない状況とも思われるのである。つまり、「村山節(みさお)の文明法則史学」が指摘する「1600年サイクル」や「プラトンの暦」が指摘する「1600年×16=約26000年の1プラトン年」によって表される展開のことである。
2025.4.25
富の増加と移転のメカニズム(1)
「時間の推移とともに、世の中がどのように変化するのか?」を考える「四次元の経済学」において、最も重要なポイントの一つは、「富の増加と移転のメカニズム」を解明することだと感じている。具体的には、「過去200年間に、どのような富が生み出され、また、この時に、どのようなメカニズムが働いたのか?」を考えることだが、この点に関して重要なポイントは「共同体の結合がもたらした生産性の増加」だと考えている。
つまり、「自発的、あるいは、非自発的な要因」に関わらず、「共同体の結合、および、規模の増加や膨張」に関しては、「分業の促進による生産性の向上」が働くものと想定されるのである。別の言葉では、「規模の経済学」が働くことにより「実体経済の成長」が見られるとともに「富の蓄積」が進展する事態のことだが、この点に関する重要なポイントとしては、「信用の量的増加」が挙げられるものと感じている。
より詳しく申し上げると、「他人に対する信用量の増加」が「資産と負債の両立てで社会の富を膨張させる展開」のことだが、実際には、「民間銀行の誕生」により「より多くの貨幣や通貨が、社会に流通し始める展開」のことである。つまり、「部分的な資金の保有により、より巨額の貸し付けを実行する状況」のことでもあるが、この事態が急展開したのが、「1913年の米国FRB創設」ともいえるようである。
具体的には、「金本位制の変化」であり、実際には、「経済成長に伴う資金需要の増加」が、最初に、「金貨本位制」を放棄させ、次に、「金地金本位制」、そして、最後に「金貨為替本位制」までをも放棄させた展開のことである。つまり、「1971年のニクソンショック」をきっかけにして、「人類史上初めての通貨と実物資産との切り離し」が実行され、その後は、現状からもお分かりのとおりに、「世界の通貨や貨幣の残高が、天文的な金額にまで大膨張した事態」となったのである。
しかも、現在では、「デリバティブとデジタル通貨の大膨張」により、「世界中の人々が、単なる数字を本位通貨として認識し、広く利用する事態」となったわけだが、この理由の一つとしては、「実体経済の成長率低下に伴う経済の金融化」が指摘できるものと考えている。具体的には、「実体経済の規模」よりも「貨幣や通貨の残高」の方が上回った結果として、「犬のしっぽが体を振り回すような逆転現象」が発生した事態のことでもあるが、その結果として発生した変化は、「多くの人々が、通貨や貨幣に対して、大きな価値を見出すようになった状況」ともいえるようである。