本間宗究(本間裕)のコラム

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2025.3.10

トランプ大統領の暴力政策

現在、世界の金融市場は、「トランプ大統領のコメントに対して一喜一憂している状況」でもあるが、この理由の一つとしては、今まで「世界の警察」の役割を果たしてきた米国が、現在、「世界の強盗」のような行為を実施し始めた可能性も挙げられるようである。つまり、「軍事力や資金力を背景にして、他国の領土や権益などを奪い取ろうとする態度」については、「覇権国家の取るべき態度」とは思われないために、今後は、世界各国がアメリカに対して、今までとは違った対応を取る可能性も想定されるのである。

そして、このような状況については、シュペングラーが100年ほど前に著した「西洋の没落」で、「驚くほどの的確さで説明されていた現象」とも理解できるが、実際には、「西暦2000年から2200年までの特徴」として、「皇帝主義の完成」や「貨幣に対する暴力政策の勝利」、あるいは、「政治形式の原始的性格の増加」などが指摘されているのである。つまり、現在は、「西暦1800年から2000年までの貨幣の時代」が終焉の時期を迎えるとともに、「暴力的な政策」の実施により、「貨幣の敗北」を意味する「通貨価値の下落」が発生する展開とも想定されていたのである。

より詳しく申し上げると、「共同体の規模拡大に伴い、貨幣の残高が増加する変化」が想定されるが、この動きがピークを付けたのが、「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱)」であり、また、以前に同様の状況となったのが、「1600年前の西ローマ帝国崩壊時」とも理解できるのである。別の言葉では、現在のような「単なる数字が通貨となり、未曽有の規模で残高が積み上がった事態」については、貨幣の歴史上、「1600年前の西ローマ帝国しか、参考になる例が存在しない状態」とも思われるのである。

しかも、現在では、1600年前と同様に、「膨大に膨れ上がった世界の通貨が、共同体の分裂や崩壊などにより、根本に存在した『信用』の消滅に見舞われる展開」とも考えられるのである。つまり、「東西冷戦の復活」が引き起こした「国家共同体の分裂」、あるいは、「G7の実質的な分裂」などにより、現在では、多くの人々が、「何を信用すべきなのか?」が理解できない状態とも思われるのである。

そのために、これから必要なことは、現在の「トランプ大統領による暴力的な政策」に関して、「過去数十年に米国が受けた最も大きな恩恵」である「大量に創り出されたデジタル通貨」が消滅の時期を迎える可能性を考慮しながら、その時に、「アメリカの態度が、どのような変化を見せるのか?」を観察することのようにも感じている。