本間宗究(本間裕)のコラム

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2025.3.4

金の再評価

現在、海外では、「金(ゴールド)の再評価」や「国家保有資産のマネタイゼーション(貨幣化)」などが注目を集めているが、これらのことは、基本的に、「数年前に注目された1兆ドルのプラチナコイン発行」と同様の意味を持っているものと考えている。別の言葉では、「これらの行為が、中央銀行のバランスシートに対して、どのような影響を与えるのか?」を検討すると、実際には、「中央銀行の資産項目の残高を増やす効果が存在するものの、一方で、資金繰りの助けとなる負債項目の増加にはつながらない可能性」も想定されるのである。

より詳しく申し上げると、「政府が1兆ドルのプラチナコインを発行して、中央銀行が買い付ける手法」については、実際のところ、「中央銀行が、どのようにしてプラチナコインの買い付け資金を調達するのか?」という大問題が存在することも理解できるのである。そして、今回の「金の再評価」、すなわち、「現在の簿価である42.22ドルを時価の2900ドルに再評価する場合」についても同様に、「保有している金(ゴールド)を、いったん売却して、その後に買い戻す方法」が取られる必要性があるものと思われるのである。

しかも、この方法によって得られる資金は「約8000億ドル」とも言われているために、現在の「約36兆ドル」という「米国の国家債務残高」と比較すると、まさに、「焼石に水」の状況とも言えるのである。そのために、以前から言われていることは、「金の価格を10万ドル以上で再評価する行為」でもあるが、この時の問題点としては、やはり、「誰が、その買い付け資金を供給するのか?」が挙げられるのである。

このように、現在の重要なポイントは、「中央銀行の資金繰りを意味する負債項目を、どのようにして増やすのか?」ということにあり、実際には、「紙幣の増刷」しか、最終方法として残されていない状況とも想定されるのである。別の言葉では、「過去100年間に30か国以上で発生したハイパーインフレ」と同様に、「紙幣の大増刷を実施し、債務残高を棒引きにする方法」のことでもあるが、この結果として発生するのが、「目に見えないインフレ税が、国民の気付く形で課される事態」とも言えるのである。そして、このような状況に追い込まれた人々は、当然のことながら、「食料品などの手当」に走り出すものと思われるが、今回の問題点は、やはり、「1600年前の西ローマ帝国の崩壊時」と同様に、「世界全体で、換物運動が一斉に発生する可能性」、すなわち、「大量の資金が、小さな市場規模の実物資産に殺到する展開」だと考えている。