本間宗究(本間裕)のコラム

* 直近のコラムは、こちら

2024.2.13

米国版の「時価総額の落とし穴」

今から35年ほど前の日本では、「日本を売れば、日本を除いた世界中の土地が買える」とか「東京都の土地を売れば、アメリカ全土の土地が買える」というような話が盛んに聞かれたが、現在では、同様の状況が「アメリカ株」で発生しているものと感じている。具体的には、「マイクロソフトの株式時価総額がフランスのGDPを超えた」、あるいは、「世界全体の時価総額において、アメリカ株が半分を占め、また、その三割がマグ7である」などのニュースのことである。

別の言葉では、35年前に計算した「時価総額の落とし穴」が、再度、思い出されたわけだが、実際には、「浮動玉と安定玉との関係性により、時価総額全体が増えたと錯覚した状況」のことである。具体的には、「1985年に約600兆円だった日本の土地の時価総額」に関して、「1990年前後に4倍の約2400兆円程度にまで増えた」と言われたものの、「浮動玉」、すなわち、「実際に売買された土地」は、全体の2から3%に過ぎなかった事実のことである。

より詳しく申し上げると、「浮動玉が2%の仮定」の下に単純計算してみると、「1985年の浮動玉は、600兆円×2%=12兆円」であり、また、「1990年の時価総額が、2400兆円×2%=48兆円」だったことも理解できるのである。つまり、「48兆円-12兆円=36兆円」の資金が入っただけで、「全体の時価総額」が「2400兆円-600兆円=1800兆円」も増えた計算となったのである。

そして、今回の「米国のマグ7」についても、似たようなメカニズムが働いているものと感じているが、今後の注目点としては、「日本の土地バブル」などと同様に、「上昇エネルギーが使い果たされたときに、どれほどの価格下落が待っているのか?」が指摘できるものと考えている。別の言葉では、多くの機関投資家が、「1970年前後のニフティー・フィフティーバブル崩壊」や「2000年前後のITバブル崩壊」などを思い出しながら、現在、鵜の目鷹の目で、「空売りのチャンス」を狙っている可能性のことである。

そのために、現時点で必要なことは、「君子危うきに近寄らず」という諺を思い出しながら、「リスクのありそうな銘柄群」に近寄らないことであり、実際には、「観賞用銘柄」として、今後の投資に参考にすることだと感じている。しかし、一方で、割安に放置された「安全に儲かりそうな銘柄」に関しては、これから想定される「世界的なハイパーインフレ」を考えながら、積極的な投資が望ましいものと考えている。