本間宗究(本間裕)のコラム

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2023.8.8

1.85兆ドルの米国債

現在、多くの人々の共通認識としては、「間もなく、24年間も続いた日本のゼロ金利政策が終了し、今後は、金利が付く正常な時代が復活する」という点が指摘できるようだが、貨幣の歴史からは、全く違った展開が訪れるものと感じている。つまり、「24年間も、なぜ、実質的なゼロ金利政策が継続できたのか?」を考えると、「谷深ければ山高し」という相場の格言のとおりに、「これから、大きな反動が訪れる可能性」も想定されるのである。

具体的には、「デリバティブの大膨張」や「世界債務残高の急増」に関して、大きな反動が訪れる展開のことでもあるが、この点について、現在、海外で危惧され始めたことは、「年末までに米国で予定されている約1.85兆ドル(約260兆円)の国債発行」とも理解できるのである。つまり、「誰が、どのようにして、巨額な規模の国債を買うのか?」ということでもあるが、現時点では、「最後の買い手」である「中央銀行」しか候補者が残されていない状況とも想定されるのである。

より詳しく申し上げると、現在では、「1913年」に設立された「米国の中央銀行であるFRBの役割」に関して、いろいろな疑問が噴出し始めている状況でもあり、実際には、「1913年に、1000ドルで48オンスもの金が買えた」という状況が、現在では、「1000ドルで0.5オンスしか買えない事実」、すなわち、「貨幣の購買力が約98%も下落した展開」に関して、「中央銀行は、誰のために存在するのか?」というような疑問までもが出始めているのである。

別の言葉では、「中央銀行の役割が、マネーを大膨張させることであり、また、この時に発生するインフレ(通貨価値の下落)を、国民に気付かれないことだ」というような意見のことである。そして、このような状況下で、今後、前述の「約1.85兆ドルの国債発行」が予定されているわけだが、この時の問題点は、やはり、「FRBが、紙幣の増刷、あるいは、CBDCの発行により、財政ファイナンス(債務の貨幣化)を実施する可能性」である。

その結果として、「中央銀行や政府の信用が、一挙に地に堕ちる可能性」も存在するために、その後、「世界中の人々が、慌てて、換物運動に走る展開」も想定されるのである。別の言葉では、「デリバティブが創り出した大量のデジタル通貨が、小さな実物資産の市場へ殺到する状況」のことでもあるが、この点を、「貨幣の歴史」から判断すると、「1600年ほど前の西ローマ帝国の崩壊時」にまで遡らざるを得ない状況でもあるために、今後は、「未曽有の規模での金融大混乱」も想定されるようである。