本間宗究(本間裕)のコラム

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2023.8.9

日本国債を巡る攻防戦

現在、「日銀」と「海外のヘッジファンド勢」との間で繰り広げられている、「日本国債を巡る攻防戦」については、きわめて大きな注意が必要だと感じている。つまり、現時点における「世界金融界における最大の歪み」としては、「約600兆ドルのOTCデリバティブ」や「その8割程度を占める金利デリバティブ」が挙げられるとともに、「唯一、マイナス金利を保っている日本が、デリバティブの崩壊を防ぐための最後の砦となっている状況」とも思われるからである。

より詳しく申し上げると「2008年前後のGFC (世界的な金融大混乱)」の時にピークを付けた「デリバティブのバブル」に関しては、その後、「世界的な量的緩和(QE)」の実施により、徐々に、残高を減らしていった状況だったことも見て取れるのである。別の言葉では、「民間金融機関から、中央銀行のバランスシートへの不良債権の移行」が目論まれたわけだが、実際には、「あまりにも巨額なデリバティブの存在により、この目論見が途中で挫折した展開」だったことも見て取れるのである。

そのために、先進諸国の金融当局者は、現在、「中央銀行のバランスシートを膨張させる方法」として、「コンピューターネットワークの中を流れない紙幣ではなく、CBDC(中央銀行デジタル通貨)の発行を選択しようとしている状況」とも想定されるのである。つまり、「債務の貨幣化」という「財政ファイナンス」を実施する方法として、「大量のCBDCを発行する政策」が予定されているものと考えているが、この時に想定される展開としては、当然のことながら、「国債価格の暴落」や「世界的な金利急騰」であり、また、「世界的なハイパーインフレの発生」とも理解できるのである。

このように、今回の「日本国債を巡る攻防戦」に関しては、「人類史上、きわめて大きな分岐点となる可能性」が高まっているものと思われるために、きわめて大きな注意を払う必要性があるものと感じている。つまり、「信用消滅からマネー消滅」という展開に関して、今までは、「根のない切り花」のとおりに、「根っこの信用が消滅したにも関わらず、表面上の華やかさに惑わされていた状況」だったものと思われるのである。

しかし、今後は、「大量のデジタル通貨が、貴金属や原油、あるいは、食料品などの実物資産に殺到する展開」が想定されるために、「未曽有の規模でのボトルネックインフレ」や「世界的なハイパーインフレ」が発生する可能性が危惧されるとともに、このキッカケとなるのが、「日本国債を巡る攻防戦での日銀の敗北」のようにも感じられるのである。