本間宗究(本間裕)のコラム

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2023.8.3

西ローマ帝国の崩壊

「約600兆ドルのOTCデリバティブ」と「約330兆ドルの世界債務」という「目に見えない金融ツインタワー」の崩壊後に、「東西文明交代の後半部分」も入るものと考えている。そして、この時に役に立つのが、「1600年前の西ローマ帝国崩壊」であり、実際には、「現在」と「1600年前」とを対比しながら、「これから、どのような展開が想定されるのか?」を考えることでもあるようだ。

具体的には、「375年のゲルマン民族大移動」や「410年の西ゴート人によるローマ略奪」、あるいは、「438年のテオドシウス法典の発布」や「476年の西ローマ帝国の滅亡」などのことである。つまり、「西ローマ帝国から東ローマ帝国への移行」に関して、最も需要なポイントは、シュペングラーが指摘するとおりに、「大都市の貨幣と知性」の崩壊により、「法治国家の消滅」のようにも考えられるのである。

別の言葉では、「共同体の分裂、および、規模縮小」により、「貨幣の総量が急減する事態」に見舞われた可能性でもあるが、このことは、同時に、「大都会に住む人々の生活苦」を表しているようにも思われるのである。つまり、「375年のゲルマン民族大移動」については、「人々が、田舎から大都市へ移住する状況」を表しているものの、その後の「民族大移動の後半部分」では、反対に、「都会で生活できなくなった人々が、地方や海外へと移住する展開」だったことも見て取れるのである。

より詳しく申し上げると、「410年のローマ略奪」に相当するのが、「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱)」であり、また、その後、「476年の西ローマ帝国崩壊までの約66年間」については、「現在の混迷」と同様に、「紛争や金融混乱、あるいは、インフレなどが発生した状況」だったものと推察されるのである。つまり、「マネーや土地などの奪い合い」が激化するとともに、それまでの「ローマ法」が役立たたなくなった展開のことである。

ただし、今回の「救い」としては、やはり、「11次元にまで進化した自然科学」であり、今後は、「三次元に留まっている社会科学が、AI(人工知能)などの活用により、より高次元に進化する展開」も想定されるのである。つまり、「歴史を学びながら、1600年前の愚を繰り返さないこと」でもあるが、この点に関して、最も必要な点は、やはり、「お金の謎」が解き明かされることにより、「現在の世界金融が、どのような状態になっているのか?」が、深く認識されることだと考えている。