本間宗究(本間裕)のコラム

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2023.7.15

インフレ大津波の第三波

現在、マスコミでは、「インフレが終了し、金利が再低下する」というような意見が頻出しているが、実際の状況としては、「インフレ大津波の二波から三波への移行状態」にあるものと考えている。つまり、「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱)」が「金融大地震」、であり、その時に発生した「インフレの大津波」が、その後の「量的緩和(QE)」の期間に、「金融のメルトダウン」により「国債や不動産などの市場で、さまざまなバブルを引き起こしてきた状況」のことである。

別の言葉では、「金融界のブラックホール」の中で、「インフレ指数に影響のない資産価格を上昇させた」という状況により、「2020年のコロナショック」までは、ほとんどの人々が、「インフレの大津波」に気づかなかったものと考えられるのである。つまり、「マネーの大膨張が、インフレ(通貨価値の下落)の真因である」という観点からは、数十年前から、本当の意味での「インフレ」が始まっていたものと想定されるのである。

そして、この事実に、世界中の人々が気づかされたのが、「インフレ大津波の第一波」である「コロナショック」であり、この時には、「需要の急減」がもたらす「実物商品価格の下落」が、その後、一挙に、「価格上昇を引き起こした」という展開だったものと想定されるのである。また、「インフレの第二波」としては、「ロシアによるウクライナへの軍事侵攻」が揚げられるが、この時には、「供給の急減」がもたらす「実物資産の価格上昇」が、その後、「価格低下により、インフレの終焉を想起させた」という状況だったのである。

つまり、「インフレの第一波と第二波」に関しては、「実物資産の需給関係によるインフレ」に過ぎなかったものの、今後は、「金融システムの崩壊がもたらすハイパーインフレ」への移行が想定されるのである。別の言葉では、「中央銀行のバランスシート」に関して、今までは、「リフレーション政策」という「民間からの資金借り入れによる残高膨張」が可能だったものの、現在では、「財政ファイナンス」という「中央銀行による国債の直接引き受け」でしか、国家の資金繰りが賄えなくなったものと理解できるのである。

より具体的には、「中央銀行のバランスシート縮小」は、「世界的な大恐慌」が引き起こされる可能性があるために、現在、先進各国の政府や中央銀行が執れる手段は、再度の、「中央銀行のバランスシート大膨張」ともいえるのである。そして、実施方法としては、「紙幣の増刷」か「CBDC(中央銀行デジタル通貨)の発行」が考えられるものの、どちらの場合も、「通貨への信用」を一挙に失わせる効果が想定されるようである。