本間宗究(本間裕)のコラム

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2023.7.13

イエレン財務長官の中国訪問

イエレン米国財務長官は、7月6日から9日まで中国を訪問したが、この理由としては、「現在の世界的な金融混乱」が指摘できるものと感じている。つまり、過去20年余りの展開としては、「米国を中心とした西洋諸国が、デリバティブの大膨張と超低金利政策の実施により、巨額な資金を手にした状況」に対して、「中国やロシアなどの、いわゆるBRICS諸国が、金(ゴールド)を蓄積しながら、西洋諸国の金融混乱を待っていた可能性」も想定されるからである。

別の言葉では、「1991年のソ連崩壊」を目の当たりにした「中国」や「現在のロシア」は、「1971年のニクソンショック以降の通貨制度」に対して、大きな疑問を抱きながら、「金(ゴールド)を裏付けとする新たな通貨制度の模索」を行ってきたものと理解できるのである。具体的には、「8月22日前後」に発表が噂される「BRICSの新通貨」に関して、仮に、この噂が実現すると、今後の「米国の金融政策」に狂いが生じる可能性も考えられるのである。

つまり、現在の「米国の思惑」としては、「FRBの即時決済サ-ビスであるFedNow」を利用して、「メガバンクが保有するデリバティブや債券などを、一挙に、FRBに移行させる方法」を検討しているようにも感じられるのである。別の言葉では、「中央銀行のバランスシート膨張策」に関して、今までのような「QE(量的緩和)」が、技術的に利用できなくなったために、今度は、「デジタル通貨による紙幣増刷」を意味する「CBDCの発行」を、秘密裏に推進しようとしている可能性のことである。

より具体的には、「1971年のニクソンショック」や「2023年の債務上限問題」と同様に、「力ずくで、巨額の不良債権を処理し、問題の解決を図ろうとする意向」とも思われるが、この時の問題点は、「BRICSが推進する新たな通貨制度」とも理解できるのである。つまり、「金の裏付けがあるかどうか?」という「大きな違い」が存在するために、「米国などの西洋諸国」よりも「BRICSの国々」に対して、より大きな信用が集まる恐れが存在するのである。

ただし、より大きな問題点としては、「現在のマネー(お金)が、どのような歴史を経て、創られてきたのか?」を考えた場合に「1600年前の西ローマ帝国」にまで遡らざるを得ない事実であり、このことは、シュペングラーが指摘するとおりに、今後、「暴力政策による貨幣の破壊」が起こる可能性が高い状況を表わしているものと感じている。