本間宗究(本間裕)のコラム

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2023.5.2

世界的な信用消滅

現在の「世界的な金融混乱」については、「信用の消滅」という言葉が。ぴったり当てはまる状態のようにも感じているが、この点については、過去を振り返りながら、より詳しい説明が必要な状況とも言えるようである。つまり、「戦後の26年サイクル」、すなわち、「1945年8月15日から1971年8月15日までの26年間」に関しては、「実体経済の成長期」であり、また、その後の「1997年8月13日までの26年間」に関しては、「経済の金融化」の時期だったことも見て取れるのである。

別の言葉では、「実体経済の成長」よりも「民間金融機関の残高」が増えた期間であり、このことは、「犬のしっぽ」の役割を持つ「マネー」が、「犬の身体」を意味する「実体経済」を振り回していたような状況を表しているのである。しかも、この後の展開としては、「民間金融機関が簿外で保有するデリバティブの大膨張」という異常事態が発生したものの、実際には、この事実がほとんど報道されず、いまだに闇の中の状態となっているのである。

より詳しく申し上げると、「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱)」が意味することは、「約8京円の規模にまで大膨張したデリバティブのバブル崩壊」であり、また、その後の「世界的な量的緩和(QE)」については、「デリバティブが創り出したデジタル通貨の食い潰し」を表していたものと理解できるのである。つまり、「中央銀行が民間から資金を借りて、国債の大量買付けを実施し、超低金利状態を作り出した事態」のことだが、この点についても、いまだに、ほとんどの人が認識できない状況となっているのである。

そのために、今回の「米国発の金融混乱」についても、現在、「ほとんどの人が、全く理解できない状態」となっているようにも感じられるが、実際には、「世界的な信用消滅」という言葉のとおりに、「根のない切り花が枯れ始めた事態」とも理解できるのである。つまり、「現代の神様」のような地位にまで祭り上げられた「デジタル通貨」が、急速に消滅を始めるとともに、「神から紙への変化」を見せている状況のことである。

そして、今後の展開としては、「80億人の換物運動」が想定されるものの、実際には、すでに、「金や銀などの貴金属が手に入りにくい状況」となっており、しかも、「過去20年間で、金価格が約8倍の上昇」というように、「通貨の価値が、金に対して、約8分の1にまで下落した状態」であることも見て取れるのである。つまり、「インフレへの対策」としては、現在、すでに「手遅れの状態」となっており、このことが、「100万人に1人も気付かないうちに、インフレが進行する展開」を意味しているものと考えている。