本間宗究(本間裕)のコラム

* 直近のコラムは、こちら

2023.2.5

インフレ税の徴収方法

現在の「世界的な金融混乱」を理解するために必要なポイントは、「金融システムの部門ごとに、バランスシートを具体的な数字で把握すること」であり、実際には、「民間企業」や「個人」、あるいは、「民間金融機関」や「中央銀行」、そして、「国家」などのバランスシートが、どのような状態になっているのか、を理解することである。また、この時に必要とされることは、「それぞれの主体が、どのような方法でバランスシートの残高を積み上げてきたのか?」を考えることとも言えるようである。

具体的に申し上げると、「民間企業や個人」の場合においては、当然のことながら、「労働」や「商品」の提供により「代価としての通貨」を受け取る方法、あるいは、「民間銀行からの借り入れ」などにより、「バランスシートの増加」が進展してきたのである。また、「民間金融機関」の場合には「預金の増加」、そして、「中央銀行」の場合には「準備預金などの増加」が指摘できるが、注目すべき点は、「国家の財政」とも言えるのである。

つまり、「国家の財政」を考える場合には、基本的に、「税収」が資金源として挙げられるが、問題は、「税収が不足した時に、将来の税金である国債を発行することにより、借金をする状況」とも言えるのである。しかも、より大きな問題点は、「国債の発行が難しくなったときに、目に見えないインフレ税が徴収される事実」でもあるが、この時の注目点としては、「国民が気付く方法」と「国民が気付かない方法」との「二種類」が存在する事実が指摘できるものと考えている。

より詳しく申し上げると、「量的緩和(QE)」と呼ばれる「中央銀行による国債の大量買い付け」は、「リフレーション政策」、すなわち、「国民が気付かないうちに、インフレ税を徴収する方法」を意味しているのである。つまり、「国民の預金を借りて、中央銀行が国債に投資する方法」のことでもあるが、この時の問題は、「どのようにして、国民の預金を返済するのか?」という点であり、実際には、「国民が気付く方法」、そして、「最後の手段」である「紙幣の増刷」が実施される展開を想定している。

別の言葉では、「ギャロッピング・インフレ」から「ハイパーインフレ」へ移行する状況のことでもあるが、現時点は、「世界的な株式や不動産などのバブル崩壊」により、「金融システムにおけるすべての主体に、資金繰りのひっ迫が発生しかかっている状況」にすぎず、今後は、間もなく、「誰もが、この事実に気付かざるを得ないような大事件の発生」、そして、「世界的な換物運動」が始まる段階に差し掛かってきたものと感じている。