本間宗究(本間裕)のコラム

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2023.1.17

「量的緩和」という名の「金融引き締め」

「黒田日銀総裁」の任期終了直前になって、ようやく、「異次元金融緩和の問題点」が議論され始めたが、この点については、「2001年から始まった量的緩和」にまで、原因を遡る必要性があるものと考えている。つまり、私が以前から指摘しているとおりに、「日銀の量的緩和」は、実際のところ、「金融引き締め」であり、この理由としては、「従来の準備預金を当座預金に名称変更し、残高を大膨張させた事実」が挙げられるのである。

より具体的には、「1990年に発生した株式と不動産バブルの崩壊」で発生した「不良債権」を処理するために、「政府と日銀は、ゼロ金利政策を実施し始めた」という状況だったものと思われるのである。そして、この時に発生した変化は、「財政赤字や貿易赤字などに悩まされていたアメリカが、急激に、デリバティブの残高を膨張させ始めた事実」であり、この結果として、その後、「世界全体が、超低金利状態の恩恵を受けることができた状況」だったことも見て取れるのである。

つまり、「金融界のブラックホール」とでも呼ぶべき状況が作り出されるとともに、「デリバティブが創り出した大量のデジタル通貨が、世界全体に広まっていった」という展開のことである。別の言葉では、「貨幣の質が低下することにより、貨幣の量が急増した状況」のことでもあるが、実際のところ、「これほどまでのマネーの大膨張は、未曽有の規模であり、辛うじて、1600年前の西ローマ帝国が参考になる状況」とも言えるのである。

そのために、今後の展開としては、「民間金融機関が簿外(オフバランス)で保有する、約600兆ドルのOTCデリバティブ」と「世界に存在する約330兆ドルの債務残高」という「目に見えない金融ツインタワーが崩壊する事態」を想定しているが、この点に関して考えられることは、「過去20年以上の日本の実質的な金融引き締めが、今後、日本人に好影響を与える可能性」のようにも感じている。

つまり、「失われた30年」が意味することは、「1980年代のバブルで生み出された大量のマネーを吸収しながら、雇用を維持することにより、日本人の健全な精神状態を保つことができた可能性」だったようにも感じられるのである。別の言葉では、「崩壊の時代を耐えながら、次の創業の時代に備えていた可能性」であり、実際には、これから想定される「ハイパーインフレの危機」に対して、「20年前から準備を始めていた可能性」のことでもあるが、この点については、「少子高齢化への対応」とともに、今後の「日本人の行動変化」に期待している次第である。