本間宗究(本間裕)のコラム

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2022.9.12

文明の春夏秋冬

約30年ぶりに、「シュペングラー(1880年-1936年)」の著書である「西洋の没落」を再読し始めたが、今回、気付かされた事実は、「村山節氏の文明法則史学が、シュペングラーの影響を受けていた点」だった。具体的には、「文明の春夏秋冬」という言葉が使われるとともに、どちらの場合にも、同じ間違い、すなわち、私が以前に指摘した「春と冬に関する認識の誤り」が存在していたのである。

より詳しく申し上げると、「西洋の没落」という著書では、「インド文化」や「エジプト文化」、あるいは、「ギリシャ・ローマ文化」や「現在の西洋文化」などが、詳しく分析されるとともに、「似たような展開を辿っている事実」が指摘されているのである。つまり、「西暦1800年から2000年までの200年間の西洋文明」については、「戦国時代の中国文化」や「紀元前300年から紀元前100年までのギリシャ・ローマ文化」、そして、「紀元前1675年から紀元前1550年までのエジプト文明」などと同様に、「貨幣や民主主義が支配する時代」と結論付けているのである。

また、「西暦2000年から2200年までの200年間」については、同様の手法により、「皇帝主義の完成する時代」であり、また、「貨幣に対する暴力主義の勝利」や「政治的形式の原始的な性格の増加」などが指摘されているのである。つまり、「諸国民が、内的に向け意識の群衆に崩壊していく時代」とも説明されており、30年ほど前の私自身は、「この説明に納得するとともに、大きな驚きを覚えた」という状況だったのである。

また、「時代の証言者」の一人として、現在の私自身が可能なことは、「過去100年間に、どのような変化が、実際に発生したのか?」を検証することであり、「1800年から2000年までの状況」としては、実際のところ、「シュペングラー」が指摘するとおりに、「本質的に大都会的な特性を備えた民族体は、解体して無形式の大衆となる展開」だったようにも思われるのである。つまり、「民主主義が衆愚政治に変化した状況」のことであり、その結果として、現在では、「暴力的政策が、世界の貨幣を破壊している状況」のようにも感じられるのである。

ただし、「シュペングラーの問題点」としては、やはり、「後世の者は畏るべし」という言葉のとおりに、「過去100年間に進化した自然科学の存在」、すなわち、「量子力学」や「分子生物学」、あるいは、「複雑系の学問」などが理解できなかった点が指摘できるが、実際には、「人智では思い至らない、天や神の智慧の存在」のことである。