本間宗究(本間裕)のコラム

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2022.9.9

幕末の金貨流出

江戸時代の末期、日本の金融市場において、特筆すべき大事件が発生した。具体的には、「1859年の6月22日から1860年の4月10日」までの約10か月間、「幕末の金貨流出」が発生した状況のことだが、この理由としては、「日本人が、世界の金融事情に疎かった」という点が指摘されている。つまり、「金銀比価」において、当時の日本では「1:4」、そして、海外では、「1:15」という比率だった状況下で、「江戸幕府が、海外の人々に金銀交換を許した」という愚策が実施されたのである。

そのために、海外の人々は、一斉に、「4キロの銀(シルバー)を日本に持ち込んで1キロの金(ゴールド)と交換し、その後、その金(ゴールド)を海外で、15キロの銀(シルバ-)と交換して、再度、日本に持ち込む」という行為、すなわち、典型的な「マネーマシーン(自働的なお金儲けの仕組み)」が形成されたのである。そして、結果としては、「日本が、50万両から100万両の金を失った」と言われており、私自身は、この事実が、現在の「日本のマイナス金利」と似ている状況のようにも感じている。

つまり、「円のキャリートレード」と言われる「円を借りて、ドルに投資し、為替や金利の差益を得る方法」のことだが、今後、「日銀の黒田総裁が、日本の金融緩和を継続する限りは、多くの投資家が、この手法に訴える可能性」も考えられるのである。別の言葉では、「海外投資家のみならず、日本人までもが、この手法を多用する可能性」も予想されるために、今後、「大幅な円安」、そして、「急激な輸入物価の上昇」が発生する展開も想定されるのである。

より詳しく申し上げると、「国家の体力」を測るバロメーターとして、「為替」と「金利」が指摘できるが、現在の日本は、「超低金利状態」だけを維持するために、「為替」や「景気動向」などを無視した状況となっているのである。つまり、「幕末の金流出」と似た「無謀な金融政策」のようにも思われるが、当時の日本では、「約10か月間で、我慢の限界に達した」という状況だったことも見て取れるのである。

そのために、今後の「日本の金融政策」には、大きな注目を払っている段階でもあるが、具体的には、「2023年の4月」に任期を終える「黒田総裁」が、「最後の最後まで、現在の『超低金利政策』に固執する可能性」である。つまり、「日本の体力が、根本から失われる可能性」であり、実際には、「日本の金融界を焼け野原状態にまで落とし込む可能性」のことである。