本間宗究(本間裕)のコラム

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2022.6.17

FRBの損失計上

ダドリー前ニューヨーク連銀総裁の指摘によると、「米連邦準備制度理事会(FRB)は、来年に損失を出す方向にあるようだ」とのことであり、この理由としては、「保有資産で稼ぐ以上の利子を、銀行の準備預金に支払う可能性」が挙げられている。別の言葉では、「短期借り、長期貸し」という「金融機関が最も避けるべき手法」を、「世界各国の中央銀行が、過去数年間、採用し続けてきた結果としての損失」とも言えるのである。

より詳しく申し上げると、「国民の預金」などを利用して、「中央銀行の準備預金」を増やし、「その資金で、低金利の国債などを買い増す方法」が取られてきたのだが、この時の注意点は、「低金利が継続する限り、問題が露見しない事実」とも言えるのである。しかし、今回のように、「世界的なインフレ率と金利の上昇」が始まった場合には、「中央銀行が受け取る利息」が長期間にわたり固定されていながらも、一方で、「中央銀行が支払う利息」については、「短期金利の上昇により、急速に増える可能性」が憂慮されているのである。

そして、この点を「日銀のバランスシート」に当てはめると、「約540兆円の当座預金」が、いわゆる「銀行の準備預金」に相当し、また、「ほぼ同金額の国債残高」が、主な「日銀の保有資産」とも考えられるのである。つまり、今後の金利上昇に関して、「短期金利」が「1%」に上昇しただけで、「日銀が支払う利息」が、「約540兆円×1%=約5.4兆円」にまで増加する結果となるものの、一方で、「日銀が受け取る利息」は、「約540兆円×0.25%=約1.35兆円」にすぎず、結果として、「5.4兆円-1.35兆円=4.05兆円」もの「損失」が計上される計算となるのである。

しかも、この時の注目点は、「1%の金利上昇では収まらない可能性」であり、また、「保有している大量の国債を売却し、いわゆるQT(中央銀行の資産圧縮)を実施しようとした場合」に、「国家財政の破綻」という事態にまで追い込まれる可能性とも考えられるのである。そのために、「中央銀行に残された手段」は、過去のパターンのとおりに、「紙幣の大量増刷により、国家の借金を棒引きにする方法」であり、この結果として発生する現象は、必ず、「ハイパーインフレ」とも理解できるのである。

また、今回は、「信用本位制のもとに、世界全体の資産や負債が、ほとんどデジタル通貨で保有されている状況」となっているために、「発行された大量の紙幣を、どのようにして運搬し、取引の決裁を行うのか?」という大問題、すなわち、「金融界の白血病」が発症する可能性も憂慮される事態となっているのである。