本間宗究(本間裕)のコラム

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2022.5.25

天国の消滅

スチュアート・カウフマン著の「自己組織化と進化の論理」では、たいへん興味深い指摘がなされているが、それは、「過去数百年間に、天国が消滅した」というものであり、この理由として、「天国は、罪によってではなく、科学によって消滅した」とも述べられているのである。そして、この点については、「聖書」が指摘する「神と冨とに同時に仕えることができない状況」の証明とも言える事実であり、実際には、「800年毎に発生する文明の大転換」が、その原因として挙げられるものと感じている。

つまり、西暦1200年前後から始まった「西洋の時代」においては、前半の400年間で、「ルネッサンス」という「古代物質文明の復活を望む動き」が発生し、その後、後半の400年間で、「時は金なり」という思想の誕生、そして、「資本主義」という「お金が最も大切である」という社会が形成されていったのである。別の言葉では、「富に仕える社会」が完成形を迎えたのが、「西暦2000年前後」だったものと考えているが、実際には、「マネー大膨張のピーク」が「西暦2010年前後」であり、このことは、約1600年前に発生した「蛮族によるローマ襲撃」と同じような意味合いを持っていたものと考えられるのである。

また、「西暦400年から1200年までの期間」については、「人々が神に仕えた時代」であり、この時には、「多くの人々が、聖アウグスティヌスが考えた『神の国』を求めた状況」だったものと想定されるのである。別の言葉では、「東洋の唯心論」、すなわち、「目に見えない世界を模索する動き」が活発になったものと推測されるが、この点については、現在の「ミクロ物理学」である「量子力学」や「分子生物学」などが、同様の役割を担い始めた状況のようにも感じている。

つまり、「世界の絶えざる進化と創造」が、「138億年前に発生したと言われるビッグバン」以降、常に持続しているものと思われるが、現在の問題点は、やはり、「村山節氏」が発見した「文明法則史学」が理解されず、その結果として、「西洋文明が全てである」という誤解が存在している状況とも言えるようである。別の言葉では、「西暦1200年前後の状況」を検証すると、「十字軍」の実例からも理解できるように、「西洋人は、強大なイスラム諸国から、聖地イスラエルを奪回しようとしていた状況」だったのである。そのために、現時点で必要なことは、「神の国を求める運動が、再度、物理学から始まっている事実を認識すること」であり、また、「この事実は、大インフレにより、マネーが実質的に消滅したときに認識される可能性」を考慮することだと感じている。