本間宗究(本間裕)のコラム

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2022.5.14

仮想通貨の取り付け騒ぎ

5月12日に発生した「仮想通貨の大暴落」、具体的には、「約4兆円もの時価総額を保有する韓国の仮想通貨ルナが、一夜にして、ほぼ紙屑の状態に陥った」という事件は、これから予想される「本格的な金融大混乱」に関する予兆的な事件であり、今後も、「デジタル通貨に関する連鎖倒産」が多発するものと感じている。そして、この理由としては、「デリバティブの大膨張」によって創り出された「大量のデジタル通貨」が、実質的に枯渇した状況、すなわち、「金融の逆ピラミッドにおけるメルトダウンがもたらした、さまざまなバブル相場の発生」により、世界の資金が使い果たされた状況が指摘できるようである。

より詳しく申し上げると、いまだに、「6京円以上もの残高」が存在する「デリバティブ」を保護するために、今までは、「中央銀行が国民の預金などを借り入れ、国債などの資産を買いつけることにより、超低金利状態が作り出されてきた状況」だったのである。しかし、現在では、前述の「デジタル通貨の枯渇」により、「中央銀行による新たな資金の創出」、具体的には、「紙幣の増刷」が求め始められているものと想定されるのである。

別の言葉では、「QE(量的緩和)」が終了し、「QT(量的引き締め)」が始まったと言われているが、実際には、「金融引き締めによる大恐慌」か、それとも、「紙幣増刷による大インフレ」かの選択を迫られている状況とも言えるのである。つまり、「金利やインフレ率の上昇」により、現在では、「大量に創られたデジタル通貨が、金融資産から実物資産へと移行を始めた状況」となっているが、この事実に関する問題点としては、「デリバティブのバブルを、どのようにして解消するのか?」が指摘できるのである。

具体的には、「デリバティブのバブル崩壊を止めようとする思惑」が、結果として、「デジタル通貨の枯渇」と「紙幣大増刷の需要」を産み出したものの、現在の「FRB」は、「1929年の大恐慌」と同様に、「資金流通量の急減」を放置した状況となっているのである。そして、この政策が導く結論は、「金融機関の大量倒産」であり、今回の「仮想通貨の取り付け騒ぎ」は、その始まりを知らせる事件だったものと考えられるのである。

そのために、これから必要とされることは、「中央銀行が、実際に、どのような行動をとるのか?」を注視することであり、具体的には、「デリバティブのバブル崩壊が、どれほどの混乱をメガバンクにもたらすのか?」、あるいは、「多くの金融機関が資金繰りに窮し始めた時に、どれほどの紙幣大増刷を実施するのか?」を見守ることであり、この点については、今後の数か月間で、はっきりするものと考えている。