本間宗究(本間裕)のコラム

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2022.5.11

日銀の混迷

最近、「日銀」に関する記事が、数多く掲載される状況となってきたが、この原因としては、「円安やインフレ率の上昇などにより、日銀の政策が疑問視され始めた状況」が指摘できるようである。あるいは、「日銀は政府の子会社である」という「安倍元首相の発言」のとおりに、「日銀の独立性が、完全に失われたことへの危機感」も存在するようだが、現時点で最も注目すべき記事は、「日銀の内田理事」による「長期金利の許容変動幅を引き上げることは、事実上の利上げである」という発言だと考えている。

つまり、現在の「日銀の混迷」については、すでに、「問題の先送り」や「時間稼ぎ」が可能な状況ではなく、間もなく、「国債の買い手不在」という、「1991年のソ連」と同様の事態に見舞われることを示唆した発言のようにも感じられるのである。別の言葉では、「短期金利は、ある程度、コントロールできても、長期金利はコントロール不能である」という事態が、間もなく、明らかになる可能性のことである。

より詳しく申し上げると、現在の「日銀のバランスシート」については、「総額が約738兆円」、そして、「国債の保有残高が約533兆円」であり、また、「国債買い付けの原資であり、しかも、国民からの借金である当座預金が、約562兆円」という状況となっているのである。そして、この点に関する、最も大きな問題点は、以前から指摘しているように、「短期借り、長期貸し」、すなわち、「短期資金を調達して、長期の投資を実践している状況」とも言えるのである。

つまり、「金融機関の破綻」、あるいは、「金融システムの崩壊」に関して、最も危惧すべき点は、「資金繰りの問題」であり、実際には、「金利が上昇した時に、どれほどの資金負担が存在し、また、どれほどの投資収入が得られるのか?」を考えることである。そして、この観点から、今後の「日銀の財政状態」を考えると、「内田理事の発言」のとおりに、「0.25%という長期金利の許容変動幅」を超えると、「日銀の資金繰り」に問題が生じ、「日銀が、唯一の国債の買い手だったような状況」が継続不能になるものと想定されるのである。

このように、現在の「日銀に関する記事」については、「日本国民」のみならず、「世界中の人々への警告」だと考えているが、実際のところ、「20年ほど前から始まった世界的な量的緩和と言われる状態」については、ほとんどの場合において、「日銀が、先導的な役割を担っていた」という状況であり、今回は、「紙幣の増刷」において、その役目を果たすことになるものと感じている。