本間宗究(本間裕)のコラム

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2022.4.7

円安の真因

現在の「市場の関心事」として、「急激な円安」が挙げられるようだが、この要因としては、やはり、「民間金融機関の機能不全状態」が指摘できるものと考えている。つまり、「信用乗数」という「中央銀行が出したお金が、何倍にまで、金融市場で増幅されたのか?」を表す数字が、現在では、「1180兆円(M2)÷685兆円(ベースマネー)=約1.72倍」にまで減少しているのである。

より詳しく申し上げると、ピーク時の1990年前後には、「約13倍」という状況だったものが、その後、徐々に減少していき、現在では、「中央銀行によるベースマネーが約685兆円」、そして、「民間金融機関による信用創造(マネーの創造)が約495兆円(1180兆円-685兆円)」という状況となっているのである。つまり、「市場に出回る資金」に関して、「多くの部分が、日銀の当座預金に吸い上げられて、国債の買い付けに回っている状況」であることも見て取れるのである。

別の言葉では、「日本の失われた30年」の根本原因として、基本的に、「民間部門に、資金が回っていない事実」が挙げられるが、実際のところ、「1000兆円の個人預金に、3%の金利を付けただけで、約30兆円もの資金が市中に出回る状況」が考えられるのである。しかし、実際には、「日本国家財政の破綻」を防ぐために、「超低金利状態」が継続された結果として、過去30年間の「日本の金融政策」の目的としては、「個人の預金を利用した政府の延命政策」だったものと理解できるのである。

このように、現在の「日本の国家体力」を図るバロメーターである「金利」と「為替」については、「金利」を抑えようとする努力の結果として、「信用乗数の低下」が発生している状況となっているのである。つまり、「民間部門の機能不全状態」が加速し、その結果として、「日本国家の信用」そのものが低下するとともに、「円安」が発生し始めているわけだが、今後の展開としては、「更なる円安の加速状態」も想定されるのである。

より具体的に申し上げると、「円安による輸入物価の上昇」が「金利上昇」に繋がり、その結果として、「日銀」や「日本の国家財政」に関して、「破綻の危機」が発生する可能性である。そして、このことは、「1991年のソ連」と同じような状態でもあるが、今回の問題点は、やはり、「金融界の白血病」という「紙幣がコンピューターネットワークを流れることができない状態」であり、その結果として、「現在のデジタル通貨そのものが、機能不全に陥る可能性」である。