本間宗究(本間裕)のコラム

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2022.1.13

いつまでもあると思うな親とカネ

今年のキーワードは、「いつまでもあると思うな親とカネ」という諺だと考えているが、この理由としては、現在の「世界的な金利上昇」に関して、「歴史的な考察」が不足しているだけではなく、「根拠なき楽観論」が支配している状況だと思われるからである。別の言葉では、現状が、「1923年のドイツ」や「1991年のソ連」を彷彿とさせるような状況でありながら、実際には、過去のパターンと同様に、「本格的なハイパーインフレが始まるまで、ほとんどの人が、きわめて呑気に暮らしていた状態」のことである。

より詳しく申し上げると、「どれほど国家の借金が増えていても、決して、国家の破綻状態は訪れない」というように、「アウシュビッツの恩赦妄想」とでも呼ぶべき状態、すなわち、「自分自身がガス室に入るまで、多くの人々が、恩赦の期待を抱いていた状況」のようにも感じられるのである。しかし、実際には、すでに始まった「世界的なインフレや金利上昇」については、「デジタル通貨の枯渇」と「増刷され始めた紙幣が実物商品へ流れる動き」を意味しているために、「数か月以内に、ギャロッピング・インフレからハイパーインフレへの移行が予想される状態」も想定されるのである。

別の言葉では、「1923年のドイツで発生した約6ヶ月間のハイパーインフレ」については、その準備段階として、「約一年間のギャロッピング・インフレ」が存在したわけだが、現在の世界情勢は、まさに、このような状況とも思われるのである。つまり、今まで抑え込まれていた「金利」が反転することにより、「先進各国の国家財政、あるいは、中央銀行の資金繰りが、今後、急速に悪化する展開」のことである。

そして、この事実を、「通貨の歴史」の観点から考察すると、「1600年前の西ローマ帝国時代の末期」に酷似した状況であり、また、「その後の800年間は、純金に近い通貨が使用されていた状態」だったことも見て取れるのである。しかも、この時期は、それまでの「地動説」が「天動説」にすり替えられるとともに、「経済の成長」や「アリストテレスなどの学問」などが忘れ去られた時代だったのである。

このように、「西暦1200年頃から始まったルネッサンス(古代物質文明の復活)」以降、「経済の成長」と「マネーの膨張」が始まったわけだが、この時に特筆すべき点は、「1971年から始まった信用本位制とでも呼ぶべき通貨制度」である。具体的には、この「新たな通貨制度」が、「マネーの狂宴」、そして、「地球環境の悪化」を引き起こした主因だったものの、間もなく、おおきな大転換を迎えようとしている状況のことである。