本間宗究(本間裕)のコラム

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2022.1.12

中央銀行のバランスシート

現在、「世界的な金融政策」において、人々が注目しているポイントは、「テーパリングの開始時期」であり、また、「中央銀行のバランスシートが、どのようにして縮小していくのか?」という方法論とも思われるが、実際には、「全く違った展開」を想定する必要性があるものと考えている。つまり、「日米欧の中央銀行」については、すでに、「各国のGDPと比較して、未曽有の規模にまで大膨張した状況」となっているために、「今後のバランスシート縮小」については、きわめて実施が難しい状況とも言えるのである。

そのために、これから予想される展開は、「1945年の日本」などと同様に、「バランスシートの再拡大により、国家の借金を減らす方法」が選択されるものと考えているが、この時の問題点としては、やはり、「人々の意識と行動が、どのように変化するのか?」が指摘できるものと感じている。つまり、「通貨」の基本は、「国家に対する人々の信用」にあるために、今後は、すでに始まった「預金価値の実質的な目減り状態」から「預金を実物資産へ移行させる展開」も想定されるのである。

より詳しく申し上げると、「パウエルFRB議長」が指摘する「FRBのバランスシート縮小」については、「保有している国債などの売却」を意味しているために、「大恐慌を引き起こす可能性が危惧され、実施不能な状況」とも考えられるのである。そして、実際の展開としては、「1991年のソ連」と同様に、「国債の買い手が消滅した結果として、一挙に、紙幣の大増刷に移行する事態」も予想されるのである。

ただし、このような状況下で発生する事態は、以前から指摘しているとおりに、「紙幣は、コンピューターネットワークの中を流れることができない」という「金融面の白血病」とも言えるのである。つまり、どのような状況下でも必要なことは、「最悪の事態を想定して、前もって準備する態度」だと感じているが、現在は、この点が完全に無視された状況のようにも感じられるのである。

別の言葉では、2年ほど前から始まった「コロナショック」と同様に、「実際の危機的状況に遭遇して、初めて、事態の深刻さを憂い始める状態」のことでもあるが、実際のところ、現在の「金融危機」については、「長い期間に蓄積された慢性病」のような状態とも言えるのである。そして、後は、「ハイパーインフレ」により、すべてをご破算にして、その後、「新たな通貨制度」が創り出される展開を想定しているが、今後の注目点は、「この意見に賛同する人々が、どれほど増えていくのか?」だと感じている。