本間宗究(本間裕)のコラム

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2021.5.21

民主主義の未来

現在、「民主主義の未来」が危惧されている状況でもあるが、この点については、歴史をさかのぼりながら、「神と人との関係性」を考える必要性があるものと感じている。つまり、「神の見えざる手」を説いた「アダム・スミス(1723年-1790年)」や「神の絶対的真理の具現化」を考えた「ヘーゲル(1770年-1831年)」、そして、「宗教はアヘンである」と唱えた「マルクス(1818年-1883年)」や「神は死んだ」という言葉を普及させた「ニーチェ(1844年-1900年)」などのように、「神と人との関係性」が、時代とともに、大きく変化していったことも見て取れるのである。

別の言葉では、「西洋の唯物論的な思考」が普及した結果として、人々は、「神」よりも「富(お金)」に「救い」を求め始めたものと思われるが、現在では、ご存じのとおりに、「目に見えないデジタル通貨」が「現代の神様」となり、「お金があれば、何でもできる」と認識する人々が、急激に増えた状況とも言えるのである。別の言葉では、「貨幣の歴史」を辿ると明らかなように、「西暦400年前後」の「西ローマ帝国の末期」以降、現在は、最も「お金が増えた時代」、すなわち、「1600年ぶりのマネー大膨張」を謳歌している時代とも考えられるのである。

そのために、現時点で必要なことは、「人々の意識と行動が、時代とともに、どのような変化を見せたのか?」を深く分析することだと感じているが、具体的には、「聖アウグスティヌス(354年-430年)」が著した「神の国」などを参考にしながら、「西ローマ帝国崩壊後に、どのような世界が出現したのか?」を検証することである。つまり、「富におぼれた人々が、富の消滅とともに、神への信仰を深めた展開」のことでもあるが、この点に関して驚かされることは、「古代ギリシャ時代」に発展した「天文学」などが放棄され、「天動説」が全面的に信じ込まれた事実である。

より具体的には、「武力による世界制覇」をもくろんだ「西ローマ帝国」は、「文明法則史学」が教えるとおりに、「財政赤字とインフレにより、あっという間にほろんだ」という状況だったが、この点に関して、「聖アウグスティヌス」は、「人の国の愚かさ」と「神の国の素晴らしさ」を説いたのである。そして、このような考えが、その後、約1500年にもわたり、西洋の人々の基本的な認識となったわけだが、現在では、冒頭に述べたとおりに、再び、「民主主義」という「人の国」が、全面的な信頼を受けている状況となっており、そのために、「民主主義の未来」については、3000年前まで歴史をさかのぼりながら、根本から考え直すべきだと感じている。