本間宗究(本間裕)のコラム

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2021.5.25

中銀デジタル通貨の実現可能性

5月25日付けの日経新聞に、「米国のFRBが、重い腰を上げて、CBDC(中央銀行のデジタル通貨)の発行を検討中である」という意見、すなわち、「デジタルドルの発行可能性」の記事が出たが、この点については、「お金の原点」や「今までの推移」を検討する必要性があるものと感じている。別の言葉では、「紙幣の大増刷」に直面した「世界各国の中央銀行」が「紙幣の代わりに、デジタル通貨の発行可能性を考えた状況」のことでもある、この時に必要とされるのは、「商品と通貨の関係性」の理解とも考えている。

より具体的には、「中央銀行が、どのような根拠や方法により、デジタル通貨の発行が可能なのか?」ということだが、実際には、「お金の根本」に存在する「信用」が重要な意味を持っているのである。つまり、100年ほど前に設立された「世界各国の中央銀行」については、それまでに蓄積された「国家の信用」、すなわち、「発展した実体経済」や「成長途上の民間銀行」などの「基礎」が存在したことも見て取れるのである。

別の言葉では、産業革命以降、「実体経済の成長」に伴い、より巨額の資金が必要とされたものの、「金貨本位制」のもとでは「資金供給量の制限」が存在したのである。そのために、その後、「三種類の金本位制」や「私が提唱する信用本位制」の移行が発生したわけだが、現時点で必要なことは、「中央銀行のデジタル通貨の大量発行が実現した時に、どのような事態が想定されるのか?」ということであり、基本的には、「実物資産への資金大流入」、すなわち、「大インフレ」が予想されるものと考えている。

つまり、「お金の性質」としては「価値のある商品に資金が集まり、価格が上昇する」という点が指摘できるが、今後、仮に、「大量のCBDC(中央銀行のデジタル通貨)」が発行された場合には、「世界中の人々が、希少価値を持つ実物資産に殺到し始める状況」が想定されるのである。別の言葉では、「紙幣」と「デジタル通貨」の違いは、「発行コスト」であり、また、「金融界の白血病を引き起こさない可能性」とも考えているが、「CBDC発行の結果」として予想されることは、「国家信用の激減」であり、また、「紙幣に対する需要の急増、そして、目に見えない通貨に対する危機意識の高まり」とも感じられるのである。

より具体的に申し上げると、「金利も付かず、目にも見えない通貨」が大量発行されたときには、「金融システム」の根本である「民間銀行の存在意義」が脅かされるだけではなく、「実体経済」に対しても、壊滅的な打撃を与えるものと考えているが、最も重要な点は、やはり、古典的な意味での「インフレ(通貨価値の下落)」が発生する可能性である。