本間宗究(本間裕)のコラム

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2021.2.19

パトスとロゴス

「神の国」という著書では、「神と人間との関係性」などが説かれているが、この時に重要な役割を持つのが、「パトス」と「ロゴス」であり、実際には、「精神の直視」や「神の理性」と言われる「ロゴス(ロジック)」と「肉体的感覚」や「動物的本能」と言われる「パトス(パッション)」のことである。つまり、「人間が動物に勝る理由は精神性であり、肉体的なものではない」という説明のとおりに、「人生の目的」や「人間の価値」は、「高貴な精神性」を持つことにあるものと考えられるのである。

また、この点に関して、参考になるのが、「マズローの欲求5段階説」とも思われるが、具体的には、「生理的欲求」や「安全欲求」という「肉体を維持するための欲求」に始まり、その後、「社会的欲求」、「承認欲求」、そして、「自己実現欲求」という「人間社会の内部で発生する欲望」に変化する状況のことである。つまり、「空海の十住心論」のとおりに、「人間は輪廻転生を繰り返しながら、より高い精神性を求め続ける存在」であり、最後には、「成仏」という言葉のとおりに、「誰でも、仏様のような存在になることが可能である」という理解のことである。

より具体的には、「惑乱」と「智慧の完成」という説明のとおりに、数多くの「煩悩」を経験したのちに「菩提の境地」に辿り着くことでもあるが、この点を、人類の歴史にあてはめると、「ヤスパースの枢軸論」のとおりに、「人知では考えられないほどの壮大、かつ、幽玄なメカニズム」が、現在、働いている状況とも言えるようである。つまり、「植物の成長」には「夜と昼の繰り返し」、そして、「季節的な移り変わり」が必要であるように、「人類」や「文明」の成長にも、「東西文明の交代」が必要な状況のことである。

そのために、現在のような「800年に一度の文明交代期」においては、「決して短絡的な結論に落ち着かず、長期的、複眼的、かつ、根本的な思考が求められている状況」だと感じているが、実際には、ほとんどの人が、「お金が無ければ生きていけない」というような「現代社会に特有の価値観」に縛られている状況とも言えるのである。

つまり、これから想定される「金融的な大波乱」、すなわち、「未曽有の規模での大インフレ」については、「悪魔のひき臼」という言葉のとおりに、「最後の段階で、貨幣の価値を崩壊させるとともに、既存の価値観を粉々にする状況」が想定されるのである。そのために、これから必要なことは、やはり、「人知」だけに頼ることなく、「神様は、どのような展開を見せてくれるのか?」を、丁寧に観察することだと感じている。