本間宗究(本間裕)のコラム

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2024.1.14

リスク資産と安全資産

以前から違和感を覚えていたことに「リスク資産と安全資産との区別」が存在するが、具体的には、「国債は安全資産であり、国債への投資がリスクオフである」などの意見のことである。つまり、現在では、「1980年代初頭から始まった世界的な金利低下」により、いつの間にか、「国債は安全資産である」というような神話ができあがったものと思われるが、実際の状況としては、「現在のアルゼンチンなどの国々」や「敗戦直後の日本」など、数多くの国々で、「国債は『リスク資産』であり、また、『身の無き財産』である」と認識されていたことも見て取れるのである。

別の言葉では、「広義、あるいは、四次元のグレシャムの法則」のとおりに、「多くの人々は、これから値が下がると思われる資産を手放し、反対に、これから値上がりすると思われる資産を手元に置こうとする傾向」が存在するものと考えられるのである。つまり、現在では、「今まで値上がり、あるいは、値下がりし続けてきたから、これからもその傾向が継続するだろう」というような安易な認識のもとに、「リスク資産と安全資産との区別」がなされている状況のようにも思われるのである。

しかも、現在では、「DX 革命は永遠に継続する」というような「新たな神話」が出来上がっている状況のようにも感じられるが、その結果として発生した心理状態が、「半導体などのテック銘柄が安全資産である」という理解ともいえるのである。つまり、「何が安全資産で、何がリスク資産なのか?」が、現代人には、よく理解されていない状況のようにも感じられるが、この点については、「銘柄に惚れず、株価に惚れる」という投資の格言が参考になるものと考えている。

具体的には、「どのような銘柄でも、実態よりも値上がりすれば価値がなくなり、反対に、実態よりも値下がりしている場合には、価値が出る状況」のことであり、実際のところ、冒頭の「世界的な国債価格」に関しては、「借り手がデフォールト(債務不履行)の状態に陥ると、貸し手が保有する資産がゼロになるリスク」も存在するのである。

そのために、本来は、「裏側に借り手が存在しない資産」、すなわち、「カウンターパーティーリスクが存在しない資産」が、基本的には、「安全資産」とも考えられるが、「投資の実践」においては、往々にして、「値下がりしている場合には、貴金属までもがリスク資産として認識されていた状況」であり、そのために、これから必要とされることは、やはり、「現在、どの商品の価格に惚れるべきか?」の理解だと感じている。