本間宗究(本間裕)のコラム

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2023.12.27

世界的な利下げの実現可能性

驚いたことに、現在の金融市場では、「欧米諸国を中心にした利下げの可能性」が議論されているが、この点については、単なる「口先介入による時間稼ぎ」にすぎず、実現の可能性は極めて低いものと考えている。つまり、多くの人々が想定していることは、過去の経験則のとおりに、「景気の悪化が利下げにつながる可能性」とも思われるが、今回は、「誰が、大量発行される国債を、実際に買えるのか?」という問題点が指摘できるのである。

別の言葉では、過去15年ほどの「リフレーション政策」、すなわち、「民間からの資金借り入れにより、中央銀行が国債を買い付ける政策」などは、すでに資金繰りの限界点に達しているために、これから想定される展開は、「国債価格の暴落が引き起こす金利上昇」とも想定されるのである。つまり、「2022年からの米国の急激な利上げ」については、「インフレを抑えることよりも、米国債投資の魅力を高めながら、資金を集めること」が、主な目的だった可能性も指摘できるのである。

より詳しく申し上げると、「米国FRBの資金繰り」に関しては、「リバースレポ」という「保有する国債などを担保にしてオーバーナイトの資金を高利で借り入れる手法」による資金調達が行われていた状況だったことも見て取れるのである。つまり、「民間部門からの急激な資金吸い上げ」が行われていたものの、その後の展開としては、「リバースレポからより高利な短期国債への資金移動」が発生したことも理解できるのである。

別の言葉では、現在、未曽有の規模での「クラウディングアウト」、すなわち、「行政府の資金需要をまかなうために大量の国債が発行されるとともに、市中金利の上昇により、民間の資金需要が抑制される現象」が発生している状況ともいえるのである。しかも、現在では、ほとんどすべての民間資金が吸い上げられた状況となっているために、これから実施可能な手法としては、古典的な「紙幣の増刷」か、あるいは、「中央銀行デジタル通貨の発行」であることも見て取れるのである。

そのために、現時点で必要なことは、「時間稼ぎや問題先送りの議論」には、決して、耳を貸さず、過去の歴史を学ぶことにより、「これから、どのようなことが起こるのか?」を理解することとも言えるのである。つまり、「国家の財政」についても、「個人」や「企業」などと同様に、「お金が無くなれば破綻の憂き目にあう」という厳然たる事実を認識することであり、また、「政府には最後の手段であるハイパーインフレで借金を防備金する方法が残されている事実」を再認識することである。