本間宗究(本間裕)のコラム

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2023.11.22

米国政府の危機的な財政状態

現在の「米国政府の財政状態」については、「1991年のソ連崩壊」の時と似たような状況とも思われるが、実際には、「長期国債に続き、短期国債の販売が難しくなった結果として、インクがなくなるまで紙幣の大増刷を実施した状況」のことである。つまり、現在の米国では、「FRBが保有する国債などを担保にして、民間金融機関から短期資金を借り入れる方法」である「FRBにおけるリバースレポ」に関して、「2021年の初頭に、ほぼゼロだった残高が、その後、2022年5月に約2.55兆ドルにまで急増した」という展開だったことも見て取れるのである。

そして、この理由としては、「FRBの資金的なひっ迫」に対応するための手法であるとともに、このような、「金利を上げながら、金融市場から短期資金を吸い上げる方法」については、典型的な「クラウディングアウト」、すなわち、「国家の資金需要を賄うための金利上昇」であり、また、その結果としての「民間金融機関からの大量の資金吸い上げが実施された状況」とも想定されるのである。つまり、前述の「ソ連崩壊」の真因としては、「国家的な資金ひっ迫がもたらしたハイパーインフレ」が挙げられるものと考えているが、現在の米国に関しても、ほとんど同じような状況とも思われるのである。

具体的には、「2023年5月から始まったリバースレポの残高急減」に関する理由として、「5.05%のリバースレポレート」よりも「5.4%の米国短期国債金利」が選考された点が指摘されているのである。つまり、米国政府が、「利上げで集まったFRBのリバースレポ残高」を、より高い金利で、「TGA(FRBにある米国財務省の口座)」へ移行させ始めているものと思われるのである。

別の言葉では、「33.7兆ドルにまで大膨張した米国の債務残高」に関して、「急増する財政赤字」のみならず、「5%以上の金利を支払い続けることの実現可能性」が憂慮され始めているのである。そして、結果としては、「リバースレポの残高が、5月の約2.3兆ドルから、11月の約0.9兆ドルにまで急減している状況」となっており、現在では、「今後の数か月間で、リバースレポ残高が枯渇する可能性」までもが危惧されているのである。

つまり、現在は、「米国政府が民間から資金を吸い上げ切った状況」、そして、これから予想される展開が、「最後の手段である紙幣の増刷が実施されない限り、1929年の大恐慌が再来する可能性」でもあるために、現在は、多くの人々が、「1923年のドイツのハイパーインフレ再来」を懸念して、実物資産への投資を始めた状況とも思われるのである。