本間宗究(本間裕)のコラム

* 直近のコラムは、こちら

2023.10.31

FTX破綻後の一年間

2022年11月9日に発生した「FTXの破綻」からの一年間を振り返ると、まさに、最近、海外で頻繁に使われ始めた「列車の脱線する姿をスローモーション映像で見ているような状況」のようにも感じている。つまり、現在は、「世界的な金融システムが、ゆっくりと崩壊している状態ではないか?」という認識のことだが、この点に関して、「天の警告」の役割を果たしたのが、「2001年の9・11事件」だったものと考えている。

具体的には、「ニューヨークの金融ツインタワーがテロ事件で崩壊した様子」が、結局のところ、「その後、目に見えない金融ツインタワーが形成され、崩壊していく状況」を、事前に示唆していた状況だったようにも思われるのである。つまり、「当時、約100兆ドルの規模だったデリバティブが、その後、2008年前後に約800兆ドルにまで大膨張した状況」や、「2008年のリーマンショック以降、崩壊を始めたデリバティブを救うために、QE(量的緩和)が実施され、中央銀行のバランスシートが大膨張するとともに、世界の債務残高が約330兆ドルにまで膨らんだ状況」などのことである。

そして、このような状況下で発生したのが、「冒頭のFTXの破綻」であり、この時に感じたのは、「この事件が、9・11事件で発生したジェット機の突入ではないか?」ということだったのである。また、その後の「2023年3月に発生した米国やスイスの銀行破綻」に関しては、「もう一機のジェット機が、目に見えない金融ツインタワーに突入した可能性」のようにも思われたのである。

しかも、今回は、「1997年8月13日に発生した世界的な信用収縮」から26年後の「2023年8月15日」に、「中国版のリーマンショック」が発生したために、私自身としては、この事件が、「目に見えない金融ツインタワーの崩壊」が始まったことを示唆している状況のようにも感じられたのである。つまり、その後は、「世界的な金利上昇により、債務の金融ツインタワーが、音を立てて崩れ始めた状況」ともいえるために、今後の注目点としては、「もう一つの目に見えない金融ツインタワーである約600兆ドルのデリバティブが、あっという間に崩壊を始める可能性」が危惧される状況とも考えられるのである。

また、このような状況下で、「世界最大の銀行、しかも、大量にデリバティブを保有するJP・モルガンの会長が、自社株の大量売却の予定を発表した」という事実については、きわめて危機的な思いを抱かざるを得ない状況でもあるが、この点については、間もなく、事実が判明するものと考えている。