本間宗究(本間裕)のコラム

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2023.10.25

皇帝主義と隷従者

「ウクライナ戦争におけるロシア側の死者は30万人にも達した」と報道されているが、この点に関して、大きな疑問となるのが、「なぜ、ロシア人が、戦争に駆り立てられ、自らの命を犠牲にするのか?」ということである。つまり、多くの若者が国外に逃亡しているような状況下で、依然として、戦争に従事する人々が、数多く存在し、また、国民からの反発も、思ったほどには活発になっていない状況のようにも感じられるのである。

そして、この理由として考えられる点は、「皇帝主義と隷従化」のようにも感じているが、実際には、シュペングラーが指摘する「西暦1800年から2000年の貨幣の時代」、そして、「2000年前後に完成する皇帝主義」のことである。つまり、「唯物論を主要な価値観とした西洋文明」の最後の段階で、「お金が最も大切なものである」という「資本主義」に対して、多くの人々が、盲目的に従っていった状況のことである。

また、この時に発生する現象は、「組織と個人に関する力関係の変化」であり、具体的には、「100人と1万人の組織を比較すると、相対的な個人の力が100分の1になる状況」のことである。つまり、「共同体の規模拡大に伴い、個人の力が弱くなり、組織に隷従せざるを得なくなる状況」のことでもあるが、今回の「グローバル化」に関しては、「マネーにおけるグローバル共同体」のような状態が形成されたものと考えられるのである。

別の言葉では、「権力への隷従者」が増えた結果として、「皇帝主義」、すなわち、「権力者の暴走」が顕著になったものと思われるが、この点に関する重要なポイントは、「権力の源泉が軍事力と資金力である事実」だと考えている。つまり、ロシアや中国が、軍事力を基にした皇帝主義であるものの、一方で、西洋の先進各国は、資金力を基にした皇帝主義である可能性のことである。

そのために、これから予想される展開としては、シュペングラーが指摘するとおりに、「暴力政策による貨幣の破壊」とも思われるが、実際には、「大膨張したマネーの自発的な消滅」、すなわち、「約600兆ドルのOTCデリバティブ」と「約330兆ドルの世界債務」という「目に見えない金融ツインタワー」の崩壊とも想定されるのである。そして、その後は、「人類全体の覚醒」、すなわち、「王様の耳はロバの耳」という物語のように、「隠蔽され続けた不都合な真実」が明らかになることにより、それまでの「隷従者」が、自発的な行動を始める展開を想定しているが、具体的には、「単なる数字」に過ぎない「デジタル通貨」に関して、突如として、「80億人の換物運動」が始まる展開のことである。