本間宗究(本間裕)のコラム

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2023.9.24

2008年と2023年との違い

「2023年8月15日」には、戦後の26年サイクルが示唆するとおりに、「中国版のリーマンショック」と呼ばれる事件が発生したが、この事実に関して注意すべき点は、「2008年と2023年との違い」を理解することだと考えている。具体的には、「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱)が、なぜ、発生したのか?」を理解することであり、また、「今回の中国版リーマンショックが、今後、どのような意味を持つのか?」を考えることである。

より詳しく申し上げると、「デリバティブの実情」を、深く認識することでもあるが、実際には、「デリバティブという金融商品が生み出したデジタル通貨の影響力」を理解することである。別の言葉では、「シニョリッジ(通貨発行益)」に関して、「民間金融機関のオフバランスにおける影響力」を理解することでもあるが、実際には、「大量のデリバティブが発行されたことにより、同量のデジタル通貨が生み出され、世界的に普及していった状況」を認識することである。

より具体的には、「2008年のリーマンショック」が意味したことが、「デリバティブの膨張がストップした事実」であり、また、「2023年の中国版リーマンショック」が意味したことは、「デジタル通貨の影響力が消滅し始めた可能性」とも思われるのである。別の言葉では、「2009年から本格化した世界的なQE(量的緩和)」に関して、「中央銀行が取れる手段が変化した事実」のことでもあるが、実際には、それまでの「リフレーション政策」、すなわち、「民間からの資金借り入れにより国債などを買い付ける方法」が難しくなった事態を表しているものと想定されるのである。

つまり、「中央銀行の資金繰り」に関して、「債務の貨幣化」を実施せざるを得なくなった状況のことでもあるが、この点に関する注意点としては、事前に用意されてきた「CBDC(中央銀行デジタル通貨)」が、現時点で、まだ実施されていない状況ともいえるのである。別の言葉では、「大事件の発生を待って、新たな手段が行使され始める可能性」も考えられるが、実際には、「26年前の1997年に発生した世界的な信用収縮」の時に、「日本の北拓銀行や山一証券」、あるいは、「米国のロングターム・キャピタル」などの破綻をきっかけにして、デリバティブの大膨張が始まった状況のことである。ただし、今回は、反対に、「何らかの大事件」をきっかけにして、世界的な「CDBCの発行」が想定されるものの、その後の展開としては、「大量に発行された貨幣が、世界の実物資産価格を急騰させる展開」も考えられるようである。