本間宗究(本間裕)のコラム

* 直近のコラムは、こちら

2023.8.15

金利とドルと金価格

海外では、いまだに、「金利と金価格の関係性」における誤解が存在し、「今後も、金利が上昇するために、これから金価格は下がるのではないか?」と考える人が多い状況とも言えるようである。別の言葉では、私自身が、40年ほど前に米国の大学で学んだ、「金価格は、ドルと金利と負の相関関係にある」という理論であり、このことは、「金利が上がれば金価格は下がり、また、ドルが強くなれば、やはり、金価格は値下がりする」という考え方のことである。

しかし、実際の相場は、「1980年に850ドルの高値を付けた金価格が、その後、2000年前後の250ドルにまで暴落した」という展開でありながら、一方で、「値上がりするはずのドルも金利も、その間、同様に値下がりした」という状況だったのである。つまり、約20年間に渡り、「金利とドルと金価格の関係性」が、理論通りに動かなかったために、私自身は、「マネーの総量が金価格に影響を与える可能性」や「デリバティブの膨張」を憂慮して、「一家に一キロの金保有」を推奨した状況だったのである。

そして、その後の展開としては、想定どおりに、「金価格の上昇」が始まったものの、一方で、「金利やドルは、低下を継続した」という状況であり、このことから理解できたことは、「金価格の決定要因」として挙げられる点が「通貨への信頼性」、すなわち、「中央銀行や政府の資金繰り」だったことも思い出されるのである。別の言葉では、人類史上、初めて、「金と通貨との関連性」が断たれた「1971年のニクソンショック」がもたらした「マネーの大膨張」に、大きな恐怖心を覚えた状況のことである。

そのために、これから想定される「世界的なハイパーインフレ」に関しては、以前から、注意深く見守ってきた状況だったが、実際の展開としては、「2000年前後から始まったデリバティブの大膨張」と「2010年前後からの量的緩和(QE)」により、「時間的な遅れ」が発生し、また、「想定される規模の拡大」が懸念される状況だったのである。

つまり、「時間の経過とともに、雪だるま式に膨れ上がった状況」のことでもあるが、今後は、「約600兆ドルのデリバティブ」と「約330兆ドルの世界債務残高」という「目に見えない金融ツインタワー」の崩壊により、「巨額なデジタル通貨」が、一斉に、「きわめて小さな貴金属や原油、あるいは、食料品などの実物資産の市場」へ流れ込む展開、すなわち、私の想定する「金融界のホーキング放射」が、「世界的な国債価格の暴落」をキッカケにして始まるものと考えている。