本間宗究(本間裕)のコラム

* 直近のコラムは、こちら

2023.8.14

大恐慌とハイパーインフレ

現在、世界中の人々が注目し始めたことは、「米国を始めとして、世界各国の債務残高が、今後、どのような結末を迎えるのか?」ということでもあるが、この時に、意見の分かれるのが「大恐慌か、それとも、ハイパーインフレなのか?」という点である。別の言葉では、多くの人々が、「金利上昇による債務残高の急増」を憂慮し始めるとともに、「過去の歴史」を調べ始めた状況とも思われるが、この結果として得られた結論が、「これから発生するのが、人類史上、一回しか発生しなかったアメリカの大恐慌か、それとも、過去に頻発したハイパーインフレか?」という疑問点とも言えるのである。

そのために、今回は、「大恐慌の原因」を説明するとともに、「今回の金融混乱」と照らし合わせてみたいと思うが、「大恐慌」に関する実情としては、「いまだに、理由が解明されていない」というのが「経済学の定説」とも理解されているのである。つまり、「なぜ、世界的な銀行の連鎖倒産が発生したのか?」が、まだ解明できない状況とも言えるようだが、実際には、「第一次世界大戦で、大量の金(ゴールド)を獲得した米国が、1923年のドイツのハイパーインフレを恐れて、金融引き締めを実施した」という点が、真の原因とも思われるのである。

より具体的には、「1913年に誕生したFRB」にとって、「金融システムのメカニズム」が理解できていなかったために、「急激な金融引き締めを実行し、民間金融機関を連鎖破たんさせた」という状況のことである。つまり、「国家や中央銀行には、大量の金(ゴールド)が存在しながらも、その金を有効に活用できなかった」というのが真相とも思われるが、一方で、「過去に頻発したハイパーインフレ」に関しては、反対に、「国家の資金繰りが厳しくなり、債務の貨幣化が実施された」という点が原因として指摘できるのである。

そして、この点を、現在の状況に当てはめると、当然のことながら、「大恐慌」が発生する可能性は、きわめて低く、反対に、「ハイパーインフレが世界的に発生する可能性」が、きわめて高くなっているものと考えられるのである。つまり、現在は、「民間金融機関に存在するOTCデリバティブ」に関して、「中央銀行のバランスシートを膨張させながら、徐々に、デリバティブの残高を減らそうとする思惑」が存在しているようにも感じられるのである。しかし、一方で、「どのようにして、中央銀行のバランスシートを膨張させるのか?」という方法論に関しては、今までのような「民間金融機関からの借り入れによるリフレーション政策」ではなく、「財政ファイナンス」という「CBDC(中央銀行デジタル通貨)や紙幣の発行」に頼らざるを得ない状況とも想定されるのである。