本間宗究(本間裕)のコラム

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2023.7.26

日本のプライマリーバランス

7月25日に発表された「国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)」については、今までの「日本国民に対して安心感を与えようとする思惑」が効果を失うとともに、「水茹での状態に陥っていた日本国民に対して、危機感を与え、覚醒を促した効果」の方が強かった状況のようにも感じている。つまり、「なぜ、世界において、日本だけでマイナス金利が実施されているのか?」を考えさせられるとともに、「円安がもたらす日本国家の体力低下」などに関して、いろいろなヒントがもたらされたものと想定されるからである。

より具体的に申し上げると、今までは、「マイナス金利による見えない税金」が徴収され、また、「円安の進行」により、「日本の民間部門の体力」が失われてきた状況だったことも見て取れるのである。つまり、「虎の子」の状態となっていた「約1000兆円の個人預金」についても、「一ドルが100円の時に、約100兆ドルだった残高が、現在の一ドルが140円という状況下で、約71兆ドルにまで目減りした状況」となっており、このことは、「日本国家の体力や資産」に関して、「国家の財政危機を救うために、日本国民が犠牲になってきた状況」とも理解できるのである。

そして、今後は、「78年前の敗戦時」と同様に、「危機感を抱いた日本人が、急速に意識と行動を転換させる展開」が想定されるが、実際には、「インフレ(通貨価値の下落)に怯えた人々が、慌てて、換物運動に走り出す可能性」である。つまり、現在、米国で危惧されている「金利上昇で金利の支払い負担が急増する可能性」に関しても、「日本の方が、はるかに危機的な状況である事態」が、今後、広く認識されるものと考えられるのである。

そのために、今後は、「円安や金利上昇に怯えた日本人が、パニック状態に陥る可能性」も危惧されるわけであり、この理由としては、今回の「内閣府のレポート」のとおりに、「利払い費用を除いたプライマリーバランスでさえ、2025年度でも赤字が継続される事態」への危機意識が挙げられるものと感じている。つまり、現在の「インフレによる税収増」と、これからの「金利上昇による財政負担増」を単純計算すると、今後、「国家や日銀のバランスシートと財政状態」に、大きな歪みが出る事態も想定されるのである。

別の言葉では、現在の「マイナス金利がもたらしている国家財政の一時的な安定状態」に関して、間もなく、「今までのツケを払わざるを得なくなる事態」が訪れる可能性のことでもあるが、実際には、「1991年のソ連」のように、「国債の買い手が消滅し、債務の貨幣化という財政ファイナンスの実施を迫られる状態」のことである。