本間宗究(本間裕)のコラム

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2023.5.16

世界的なバランスシート不況

今後、最も危惧すべき点は「世界的なバランスシート不況」であり、実際には、「バランスシートの非対称性」、すなわち、「資産価格は上がったり、下がったりの変動を見せるものの、負債の価格は一定である」という性質がもたらす「急激な資金ひっ迫状態」のようにも感じている。具体的には、「1990年代の日本」のように、「土地と株式の合計で約3000兆円」と言われた時価総額の急減により、「約300兆円もの不良債権」や「日本の失われた30年」が発生した状況のことである。

そして、このメカニズムを、現在の世界情勢に当てはめると、実際には、「約30年前の日本と比較して、約40倍程度の資産が存在するとともに、今後、約40倍の規模で不良債権の発生が見込まれる状況」も想定されるのである。つまり、「デリバティブと債券、そして、株式と土地の合計時価総額」が「約12京円」であり、また、「不良債権の総額」が「約1.2京円」という状況が予想されるとともに、「今後、この動きが、一挙に発生する可能性」も想定されるのである。

より詳しく申し上げると、「2021年に発生した、若干の世界的な債券価格の下落」、そして、「2022年に発生した世界的な株価の下落」が、現在の「世界的な金融混乱」の要因とも思われるが、今後は、「デリバティブの完全消滅により、債券価格の急激な価格暴落」も想定されるのである。つまり、「1991年のソ連崩壊」と同様の現象が、世界的に発生する可能性のことであり、この時に、大きな意味を持つのが、「金融界の大量破壊兵器と呼ばれるデリバティブの存在」とも理解できるのである。別の言葉では、「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱)」以降、「BIS(国際決済銀行)を中心にした先進各国の金融当局者」が目論んできたことは、「デリバティブの崩壊と国債価格の暴落を防ぐこと」とも想定されるのである。

このように、今までは、「中央銀行のリフレーション政策」、すなわち、「民間部門から資金を借り入れ、大量の国債を買い付けることにより、超低金利状態を作り出す政策」により、「時間稼ぎ」と問題の先送り」が可能だったものの、現在では、「世界的なバランスシート不況」がもたらす「資金的なひっ迫状態」により、「最後の手段」である「紙幣の増刷」、あるいは、「CBDCの発行」が必要とされる段階に差し掛かってきたものと考えられるのである。そして、このことが、私が想定する「戦後の26年サイクル」、すなわち、「2023年8月15日前後に予想される大事件」であり、また、難しかった「メカニズムの解明」も最終段階に入ったものと感じている次第である。