本間宗究(本間裕)のコラム

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2023.5.8

大都市の貨幣と知性

シュペングラーの「西洋の没落」では、「大都市住民の特徴」として「貨幣(富)と知性」が挙げられているが、この点については、私の仮説である「共同体の規模拡大がもたらす富の増加」が当てはまるものと考えている。また、「大都市の市民階級」に区分される人々は、現在の状況からもお分かりのように、「知性的、かつ、裕福な生活」を望む傾向があるようにも思われるのである。

そして、この反対の状況としては、「血と伝統」、あるいは、「神と本能」が指摘できるものと感じているが、実際のところ、「血縁を基にした小さな共同体」においては、「伝統」が重んじられるとともに、「大自然の脅威」などを経験することにより「神への畏敬心」が強まるものと思われるのである。別の言葉では、「知性」よりも「本能」が重要視される環境のことでもあるが、反対に、現在のような「大都市の巨大空間」においては、「社会の部品となった疎外感」や「知性重視の状態」などにより、「生命力の枯渇、そして、本能の渇望」が特徴として挙げられるものと考えられるのである。

このように、現在の特徴としては、「民主主義と中央銀行」、あるいは、「都市化現象である政党政治」などが指摘できるものの、今後は、すでに始まった「貨幣の敗北」により、「共同体の分裂」が加速する展開も想定されるのである。つまり、現在の「米中の対立構造」については、すでに、「グローバル共同体の分裂」、そして、「富の残高が急減している状況」を表しているものと考えられるのである。

そして、今後は、「1600年前の西ローマ帝国の崩壊時」と同様に、「財政赤字がもたらすインフレ」により、「大都市での生活」が苦しくなり、その結果として、「民族の大移動」、すなわち、「海外や地方などへの移住」が始まる状況も想定されるのである。別の言葉では、「800年間も続いた西洋的な奪い合いの時代」が終焉し、今後は、「東洋的な分かち合いの時代」が、今後の800年間にわたり継続する状況を想定しているが、実際には、「11次元にまで進化した自然科学」が「三次元に留まっている社会科学」を進化させる展開が期待できるものと感じている。

より具体的には、「お金の謎」や「時間のサイクル」、そして、「心の謎」などが解明されることにより、「無駄のない効率的な社会」が形成される可能性のことでもあるが、実際には、最初に、「未曽有の規模での金融大混乱」により、「既存の常識や価値観が完全崩壊する事態」が想定されるものと感じている。