本間宗究(本間裕)のコラム

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2023.1.10

米国の金融政策大転換

現在、海外では、「FRBのピボット(pivot)」、すなわち、「米国金融政策の大転換」が盛んに議論されているが、この時の問題点としては、「具体策の欠如」が指摘できるものと考えている。つまり、現在では、「QT(量的縮小)からQE(量的緩和)への転換が起こる可能性」が、「FRBのピボット」と理解されているようだが、この議論に不足しているのは、「三段階の信用創造(貨幣の創造)」、すなわち、「紙幣発行による中央銀行の貨幣(マネー)創造」、「預金の増加による民間金融機関の貨幣(マネー)創造」、そして、「金融商品の創設による市場の貨幣(マネー)創造」の理解とも言えるのである。

より具体的には、「2008年前後のGFC(世界的な金融大混乱)」が、「市場によるマネー創造」のピークだったが、その後は、「バランスシートの非対称性がもたらす不良債権の増加」、すなわち、「デリバティブの残高減少」が、「金融のメルトダウン」や「何でもバブル」の状態を引き起こしたものと考えられるのである。つまり、「中央銀行のバランスシートを大膨張させながら、超低金利状態などの市場コントロールを実施することにより、金融システムの崩壊を防いだ状況」のことである。

別の言葉では、「大量に創り出されたデジタル通貨が、コンピューターネットワークの仮想現実の世界で、さまざまなバブルを発生させた展開」のことだが、この時の問題点としては、「実体経済へデジタル通貨が流出し始めた状況」が指摘できるようである。つまり、「お金(マネー)」には、「利益の出る商品に流れる性質」が存在するために、「2022年」には、「何でもバブル」が「さまざまな実物商品」に到達した状況のことである。

より具体的には、「株式や土地、あるいは、デリバティブなどのインフレ指数に含まれていない商品」ではなく、「インフレ指数に含まれている実物商品」に対して、資金の流入が始まったために、「世界全体が、インフレの実情に気付かされた可能性」のことである。しかも、今回は、「中央銀行のバランスシート増加」に関して、「限界点」に到達したために、「ゼロ金利やマイナス金利の蓋、あるいは、市場価格のコントロールなどにより、デジタル通貨の封じ込めができなくなった状況」とも理解できるのである。

そのために、今後の「FRBのピボット」としては、再度、「信用創造の基本」に立ち戻り、「大量の紙幣増刷により、世界に存在する不良債権の完全消滅を図る可能性」が指摘できるが、実際には、このことが、「信用本位制の崩壊によるグローバルハイパーインフレの発生」に繋がるものと考えている。