本間宗究(本間裕)のコラム

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2022.11.13

金利上昇による世界的な債務負担の急増

11月9日に発生した「FTXの金融混乱」は、今後、世界の金融システムに、大きな悪影響を与えるものと思われるが、現在の状況は、「目に見えない金融ツインタワー」、すなわち、「約500兆ドルものOTC金利デリバティブ」と「約330兆ドルもの世界債務」に関して、「2001年の9・11事件」の時のように「タワーにジェット機が突入した状況」のようにも感じている。つまり、今回の事件をきっかけにして、世界の金融システムが完全崩壊するものと考えているが、この点に関して、今後、最も注目すべきポイントの一つは、「金利上昇により、世界的な債務負担が、どれほど膨らむのか?」ということである。

より詳しく申し上げると、「約330兆ドルもの世界債務」に対して、すでに始まっている「価格下落」に加えて、「3%の金利上昇が、どのような影響を与えるのか?」ということであり、実際には、「約10兆ドルもの金利負担増」が予想されるのである。つまり、「先進各国を中心にして、今後、利払い費用の急増が懸念される状況」のことであり、このことは、今後、さらに、「国債価格の暴落」を引き起こす可能性も憂慮されるのである。

しかも、このような状況下で、「デリバティブに関連するメガバンクの破たん」が発生すると、その時には、「大恐慌か、それとも大インフレか?」の議論が再燃する可能性も考えられるのである。つまり、「メガバンクを救済するのか、それとも、破産させるのか?」という政府の選択のことでもあるが、実際には、「政府が印刷した銀行券を、中央銀行へ無制限に資本注入する方法」が選択されるものと考えている。

そのために、これからの心構えとしては、「実体経済」と「マネー経済」との区別を確認しながら、「目に見えない金融ツインタワーの完全崩壊までは、現在の金融混乱が継続する可能性」を覚悟することだと感じている。つまり、「1923年のドイツ」や「1945年の日本」などと同様に、「ハイパーインフレ」から「デノミ」、そして、「新たな通貨制度の確立」という展開に備えることである。

しかし、一方で、このような状況下では、「戦争のための資金確保」が難しくなるだけではなく、「生活苦による国民の反抗」も想定されるために、「中国」などで、「独裁者の暴走」が転機を迎える可能性も想定されるのである。つまり、「シュペングラー」が指摘する「皇帝主義の完成」は、基本的に、その後の「崩壊」を含むものと思われるが、今後、最も注目すべき点は、「貨幣に支配された人々が、貨幣の消滅とともに、どのような行動を取り始めるのか?」が指摘できるものと考えている。