本間宗究(本間裕)のコラム

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2022.11.5

市場経済と共同体

1999年に始まった「ポスト資本主義研究会」では、メインテーマの一つが、「市場経済と共同体との関係性」を解明することにあったが、残念ながら、今までは、あまり、成果が得られていない状況だった。つまり、「共同体が、どのようにして、規模的な成長を遂げるのか?」や、「ヘーゲルの主張する国家共同体」、あるいは、「現在のグローバル的な共同体」などについては、ほとんど説明が不能な状況だったのである。

そのために、今回は、原点に戻り、「共同体の規模が、社会的な結び付きと同義語である可能性」、あるいは、「社会的な結び付きの強度が信用の残高を意味するとともに、マネー膨張との関係性を表している可能性」などを考えてみたいと思う。つまり、現在の「グローバリズム」や「マネー残高の膨張」については、過去の歴史を遡ると、「西暦400年前後に崩壊した西ローマ帝国」にまで行き着かざるを得ない状況とも言えるのである。

別の言葉では、シュペングラーが主張する通りに、「貨幣が支配する時代」の後に、「暴力政策による貨幣崩壊の時代」が訪れる展開のことでもあるが、この点については、今後、実証的な研究が可能な状況のようにも感じている。具体的には、現時点の「私の仮説」である、「西暦400年前後に、西ローマ帝国が作り出した巨大な国家共同体が崩壊し、数多くの小さな共同体へ大分裂を起こした可能性」や、「その後、約1600年の時間をかけて、共同体の結合が発生した展開」のことである。

そして、このような「共同体の結合と巨大化」のメカニズムとして、「西暦400年から1200年までの東洋の時代」においては、「唯心論」や「宗教」などが、その役割を担ったものと思われるのである。また、その後の「西暦1200年から20000年」までは、「唯物論」や「市場経済」、あるいは、「お金」が、より巨大な共同体の成立に貢献した状況だったものと考えている。

このように、「市場経済」と「共同体」との対比については、基本的な誤解が存在した状況であり、実際には、「マネーの残高」と同義語とも思われる「社会的な信用の量」により、「共同体の規模」が決定されるものと考えている。そして、現在の「世界的な金融混乱」については、「1600年前の西ローマ帝国崩壊」と同様の意味を持っており、今後は、「数多くの小さな共同体への分離や分割」が発生する可能性が高まっているものと思われるが、この時の救いとなるのは、やはり、「社会科学の次元的な上昇」であり、実際には、「より高度な精神文明の発展」とも言えるようである。