本間宗究(本間裕)のコラム

* 直近のコラムは、こちら

2022.9.2

イエレン米国財務長官の目論見

今後の数か月間は、「世界的なインフレの行方」において、きわめて重要な期間になるものと思われるが、この点に関して、最も注目すべき人物は、「パウエルFRB議長」ではなく、「イエレン財務長官」だと感じている。つまり、「金融政策の手腕」、すなわち、「金融経済の知識や実践」においては、「イエレン財務長官」の方が圧倒的な力量を持っているものと考えられために、今後の注目点は、「イエレン財務長官が、デリバティブの問題を、どのようにして解決するのか?」だと考えている。

より詳しく申し上げると、今回の「世界的なインフレ」については、「エネルギー価格などの実体経済」よりも、「デリバティブを中心としたマネー経済」の動向が、根本的な原因となっているものと考えられるのである。そして、その事実を熟知する「イエレン財務長官」としては、「どのようにして、デリバティブの残高を縮小していくのか?」に腐心しているものと思われるが、実際には、「できるだけ時間をかけて、残高の縮小を図る方法」を模索している状況のようにも感じている。

 つまり、今までは、「中央銀行のバランスシート残高を膨張させる方法」により、「徐々に、また、秘密裏に、デリバティブの残高減少に取り組んできた状況」だったものと想定されるのである。しかし、「2019年9月17日」に発生した事件、すなわち、「短期金利の急騰」については、「民間金融機関から中央銀行への資金移行」に限界点が訪れた事実を意味しており、その後は、「レバースレポ残高の急増」という「緊急避難的な手法」により、中央銀行の資金繰り問題を切り抜けてきたものと考えられるのである。

ただし、最近の「インフレ率や金利の急騰」については、「小手先の手段」では対応が難しくなっており、そのために、「より根本的な解決法」が求められ始めたものと思われるのである。より具体的に申し上げると、「中央銀行のバランスシート残高を、どのようにして再膨張させるのか?」、あるいは、「デリバティブの残高を、どのようにして、縮小させるのか?」ということである。

そして、この点については、「有能なイエレン財務長官」にとっても、きわめて至難の業のようにも感じられるとともに、実際に予想される展開としては、「デリバティブの時限爆弾破裂」がもたらす「資金的な逼迫」に関して、「世界中の人々が、大慌てする事態」であり、また、「先進各国の金融当局者が、急速に、紙幣の大増刷により、市場への資金供給を実施する状況」とも言えるようである。