本間宗究(本間裕)のコラム

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2022.6.29

世界的な債務のワナ

現在、「スリランカにおける債務の罠」が、世界的な注目を集めているが、この問題の本質は、「一帯一路の悪影響」よりも、「バランスシートの非対称性」であり、実際には、「資産は価格の変動に見舞われるが、負債は、ほとんど影響を受けない状況」だと考えている。つまり、「過剰な債務」を抱えていても、それ以上の「資産価格の上昇」が伴った時には、「資金繰り」の問題に見舞われない状況も想定されるが、反対に、「資産価格の下落」が発生した時には、「債務の罠」の問題が発生し、現在のスリランカのように、典型的な「ハイパーインフレ」に見舞われる展開のことである。

より詳しく申し上げると、「1971年のニクソンショック」以降、私が提唱する「信用本位制」と呼ぶべき通貨制度において、「デリバティブ」という金融商品が、「デジタル通貨の大膨張」という副産物を産み出したものと考えられるのである。別の言葉では、「世界全体のバランスシート」において、「資産」と「負債」の両方が、スパイラル的な大膨張を見せ、その結果として、現在、「天文学的な金額」にまで増えたことが見て取れるのである。

そして、これほどまでの異常事態に関して、「バランスシートの非対称性」が意味することは、「資産価格の上昇」や「超低金利状態」が継続している限り、問題が発生しなかった状況とも言えるのである。つまり、「金融の抑圧政策」により、すべての問題点が隠蔽され、先送りされていた状況のことだが、現在では、「インフレ率や金利の急騰」とともに、「すべての問題点が白日の下にさらされ始めた状況」となっているのである。

そのために、今後、最も注意を払うべきポイントとしては、「世界的な債務のワナ」であり、実際には、すでに始まった「資産価格の急落」が引き起こす「世界的な資金繰りの問題」とも考えられるのである。しかも、今回は、「世界的な金利上昇」により、「過大な債務がもたらす金利負担の上昇」も、大きな悪影響をもたらすものと想定されるが、実際には、「現在の日本」のように、「金利が5%にまで上昇すると、金利負担により、税収が食い潰される可能性」が危惧される状況のことである。

そして、この問題への対応策としては、やはり、「最後の貸し手」である「中央銀行」が、「紙幣の大増刷」に訴える方法しか残されていない状況とも思われるが、この時の問題点は、やはり、「劇場の火事」のような状況が、「世界の金融界」で発生する可能性であり、実際には、現在の「デジタル通貨」のみならず、大量に増発された「紙幣」の購買力が、急速に失われる事態のことである。