本間宗究(本間裕)のコラム

* 直近のコラムは、こちら

2022.6.13

社会の結び付きとマネーの残高

「貨幣の歴史」を訪ねると、たいへん不思議な疑問点に突き当たるが、それは、「今回のマネー大膨張が、なぜ、西ローマ帝国以来、1600年ぶりの出来事なのか?」ということであり、実際のところ、「西暦400年から西暦1900年頃までの約1500年間」においては、「金貨本位制」という「純金に近い通貨が、通貨として使われていた状況」だったことも見て取れるのである。

別の言葉では、「銀や銅、そして、紙幣などの通貨が発行され、一時的なマネーの大膨張が発生した」という期間が存在したものの、基本的には、「20世紀に発生した大変化」、すなわち、「三種類の金本位制」と「1971年以降の信用本位制」については、「西ローマ帝国以来、1600年ぶりのマネー大膨張を表す出来事」だったものと考えられるのである。しかも、今回は、「単なる数字」が「本位通貨」となり、「コンピューターネットワークの中で、未曽有の大膨張を実現した」という状況だったのである。

その結果として、「約20年間の世界的な超低金利状態」が発生したわけだが、この理由としては、「デリバティブという金融商品が、通貨と商品の両方の残高を大膨張させた事実」が指摘できるものと考えている。つまり、「西洋の唯物論的な思考と行動」が行き着いた先が、今回の「マネー大膨張」であり、その結果として発生した出来事が、「金利の低下」のみならず、「地球環境の破壊」だったことも理解できるのである。

ただし、現在では、「紙幣の大増刷による、デジタル通貨の完全消滅」という可能性が急浮上しており、このことは、「今までの1600年間に蓄積された社会の結び付き」が崩壊する状況を表わしているものと感じている。つまり、「西暦400年から西暦1200年までの期間」については、「東洋の唯心論」が意味するように、「神の存在」を中心にして、「社会の結び付き」が強まっていった状況だったものと想定されるのである。

そして、その後の「西暦1200年から西暦2000年の期間」においては、「西洋の唯物論」が原動力となり、「国家共同体」と「グローバリズム」というような状況にまで、世界の結び付きが強くなったものと思われるのである。別の言葉では、「人々の信用」が、最も強くなり、また、その結果として、「信用」を形に著わした「マネーの残高」がピークを付けたものと考えられるが、現在では、反対に、「反グローバリズムの動き」が始まるとともに、「1600年前と同様に、小さな共同体への分裂が始まった段階」のようにも感じられるのである。