本間宗究(本間裕)のコラム

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2022.2.17

糸とボタンのランダムグラフ

「文明法則史学の800年サイクル」や「東洋の60年サイクル」などを研究すると、「サイクルの前半と後半の劇的な違い」に驚かざるを得ないが、具体例としては、「実体経済」と「マネー経済」との違いが挙げられるものと考えている。つまり、「企業の売り上げとコストの関係」などと同様に、前半の、「実体経済の成長」や「売り上げの増加」であり、また、後半の、「マネー経済の成長」や「コストの増加」のことである。

より具体的には、「フロー」の性質を持つ「実体経済」と、「ストック」の性質を持つ「マネー経済」の違いが指摘できるわけだが、実際には、「意識」と「行動」との「タイムラグ(時間的なズレ)」が関係しているようにも感じている。そして、この点に関して、最近、たいへん興味深い理論に出会ったが、それは、「糸とボタンのランダムグラフ」というものであり、このことは、「自己組織化」と「エントロピー(無秩序化)」に関して、「どのようなメカニズムで発生するのか?」を説明したものである。

つまり、「数多く存在するボタンを、糸で結びつける実験」を行った場合に、「半数を超えた場合に、魔法が発生する事実」であり、実際には、「ほとんどがクラスター化する」という状況のことである。別の言葉では、「社会などの組織化」が終了し、その後の半分は、「エントロピーの法則」のとおりに、「複雑化」や「形骸化」などにより、「無秩序」の方向に向かう展開のことである。

そして、この点を「人類の歴史」に当てはめると、「西暦1200年から2000年までの西洋の時代」において、中間点の「西暦1600年前後」に、「人々の意識が『時は金なり』という思想に染まり始めた状況」だったことも見て取れるのである。しかも、この点に、私が考案した「心の座標軸」を合わせて考えると、現在の状況としては、「人々の意識が、すでに、目に見えないものに向かいながら、一方で、行動の面において、自分のためだけに向かっている状況」とも言えるのである。

このように、「人々の価値観」は、「心の方向性」で決まり、現在は、「1600年前と同様の状態」になっているものと考えているが、この点ついては、スチュアート・カウフマン氏の著書である「自己組織化と進化の論理」により、詳しい説明が可能なものと感じている。しかも、「経済学や心理学などの社会科学」に関して、大幅な次元上昇が可能な状況のようにも感じているが、実際には、「DXバブル」の時と同様に、「この点を理解した人々が、今後の成功者になるのではないか?」とも感じている。