本間宗究(本間裕)のコラム

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2021.11.19

復活し始めた価格の自動調節機能

「需要が供給を上回れば価格が上昇し、需要の減少に繋がる」、また、反対に、「供給が増えたものは価格を押し下げ、新たな需要を喚起する」ということが「価格の自動調節機能」と呼ばれるものであり、「大自然界」と「人間社会」との調和は、数十年前まで、この機能によって保たれてきた。別の言葉では、「人類が地球に住むことを許されていたのは、この調和を保つことが絶対的な条件」でもあったが、実際には、「1971年のニクソンショック」、そして、「1980年代初頭からのデリバティブ大膨張」などにより、「価格の自動調節機能」が失われ始めたものと想定されるのである。

つまり、「人類の奢り」とも言える「自然は征服されるべきである」という認識や理解により、「人類は、利益に繋がる限り、どのような行為でも行うようになった」という変化が発生したわけだが、この理由としては、「デジタル通貨の大膨張による市場価格の歪み」が指摘できるものと考えている。より具体的には、「価格統制による金利や物価の低下」のことだが、数年前までは、「金融界のブラックホールの中で、デジタル通貨と金融商品の間で、資金の流れが発生していた状況」のために、「金利の異常な低下は発生したものの、実物資産の価格上昇にまでには繋がらなかった」という展開だったのである。

別の言葉では、過去20年余りは、「仮想現実の世界で、人類がデジタル通貨を追い求めていた期間」だったものの、最近は、「紙幣に交換された通貨が、実物資産へ流れ始めた」という変化が発生し始めているのである。つまり、「金融メルトダウンの進展」により、「価格の自動調節機能」が「金融市場から実物市場へ移行を始めている段階」となっており、このことが、現在、古典的な「インフレ(通貨価値の下落)」を発生させているのである。

また、この変化が発生したキッカケの一つが、今回の「世界的なコロナショック」とも思われるが、このことは、「実体経済のマヒ状態」を表しており、今後の注意点としては、「マネー経済のマヒ状態」とも言える「金融界の白血病」とも想定されるのである。つまり、「大膨張したマネーが、紙幣に変化して、実体経済に対して、大津波となって押し寄せてくる状態」のことであり、このことが、「実体経済」と「マネー経済」との間で発生する「価格の自動調節機能」とも理解できるのである。

しかも、今回の大変化は、「1600年前に発生した西ローマ帝国の崩壊」以来の出来事であり、その結果として、予想以上の大混乱も想定されるものの、この危機を切り抜けるために必要なことは、やはり、「歴史の精緻な分析」だと考えている。