本間宗究(本間裕)のコラム

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2021.10.8

1000兆円の個人預金

日本の「家計の現預金」は、「2021年6月末」で「約1072兆円」も存在すると言われているが、この事実を、「金融システムの観点」から考察すると、全く別の姿が見えてくるものと感じている。つまり、「日本の個人は、現預金を後生大事に保有して、動かそうとしない」という理解のことだが、実際には、「銀行が保有する預金が、日銀に当座預金として貸し出され、ほとんどが国債に投資されている状況」となっているのである。

そして、このような「単純な事実」についても、いまだに、マスコミで報道されない状況となっているが、今後の注目点は、「この事実に気付いた個人が、その時に、どのような行動を取るのか?」だと考えている。つまり、「戦後の日本人」と同様に、「信用できなくなった預金を、実物資産に交換し始める可能性」のことであり、また、この時の注目点は、「日銀や民間銀行が、どのような行動を取るのか?」ということである。

具体的に申し上げると、最初に発生する現象は、「日本の個人が預金を引き出す」という事態であり、この結果として起こる変化は、「民間銀行が、日銀から当座預金を引き出す状況」である。つまり、現時点で「約530兆円」も存在する「日銀の当座預金」については、「民間金融機関からの借入資金」であり、この結果として、「国債の買い付け」や「超低金利状態の維持」が可能となったことも見て取れるのである。

しかし、現在では、「米国」を筆頭にして、「資金繰りの問題」に直面し始めており、その結果として、「デリバティブの時限爆弾」などのように、「今まで隠されていた大問題が表面化する可能性」も憂慮される事態となっているのである。そして、このような状況下で、世界各国の中央銀行が取れる手段は、以前から申し上げているように、「紙幣の増刷」しか存在しないものと想定されるのである。

つまり、これから予想される「世界的な大インフレ」については、「誰もが想像できないほどの規模とスピードで世界を襲う可能性」が想定されるが、現時点で注目すべき事実は、「ほとんどの国民が、いまだに、国家や銀行を信用し、預金を動かそうとしない状況」とも言えるのである。そして、この点について、歴史の研究から見えてくる現象は、「国民意識の瞬間的な大転換」であり、実際には、「明治維新」や「1945年の敗戦」などのように、「日本人の心に、奥深く刻み込まれた記憶」とも言えるようだが、実際には、今後、「紙幣はコンピューターネットワークの中を流れることができない」という「金融化の白血病」に見舞われた時に、ほぼ瞬間的に蘇ってくるのではないかと感じている。