本間宗究(本間裕)のコラム

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2021.9.14

憂慮される史上初の米国債デフォルト

「米国債の上限引き上げ問題」については、現在、「近いうちに上限が引き上げられ、問題が解決する」という理解が一般的な状況とも言えるようだが、実際には、大きな隠れた難問が存在するものと感じている。具体的には、「上限が引き上げられても、なお、米国債のデフォルトが発生する可能性」であり、実際には、「米国債の買い手が消滅し、金利の急騰が発生する可能性」のことである。

つまり、現在の米国では、すでに「約28兆ドル(約3100兆円)もの国債」が発行されているが、この事実に関して認識すべき点は、「新たな買い手」、すなわち、「米国政府への新たな資金の貸し手」が存在しなければ、「米国政府の支払い」が難しくなる状況である。別の言葉では、「火の車の借金財政」において重要なポイントが、「雪だるま式に膨らむ借金返済に対して、常に、より多くの借金を迫られる状況」とも言えるのである。

そして、この方法が限界点に達した時、すなわち、「資金の出し手」が存在しなくなったときに、いわゆる「財政破綻」が発生するわけだが、この時に注目すべき点は、「中央銀行には、最後の手段が存在する状況」である。つまり、「国債」というのは、「国家が、国民などから資金を借りる際に発行される債券」でもあるが、「1991年のソ連」で発生した現象は、「中央銀行が、紙幣という『借金の証文』を発行して、国民から資金を調達した」という状況だったのである。

このように、「個人であろうが、国家であろうが、借金ができなくなると、破綻や破産の状態に陥る」ということは、間違いのない事実でもあるが、今回、この点に関して難しかったことは、「通貨と商品の多様化」だった。つまり、「100年ほど前の金貨本位制の時代」においては、現在のような「マネーの大膨張」が発生せず、「財政破綻が引き起こす金融混乱」についても、きわめて小さな状況だったことも理解できるのである。

しかし、今回は、「1971年のニクソンショック」以降、私が提唱する「信用本位制」、そして、「デリバティブという金融派生商品」が、前代未聞の規模で「大量のデジタル通貨」を創り出したのである。そのために、今後の反動についても、きわめて大きなものになる可能性が予想されるが、実際には、「ピーク時の土地の時価総額が約2500兆円」だった「1990年の日本バブル崩壊」と比較すると、今回の「デリバティブ」は、「ピークの時価総額が約8京円」というように、「30年前とは、約30倍の規模」であり、そのために、反動も、同様の規模になるものと想定されるのである。