本間宗究(本間裕)のコラム

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2021.9.6

財政リスクの警鐘

9月6日の日経新聞に、「財政リスクの警鐘ならず」という記事が掲載され、「なぜ、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の価格が上昇しないのか?」について疑問を呈している。しかし、この点についても、やはり、「三次元の経済学」である「現状のCDS価格だけを分析する手法」よりも、「四次元の経済学」である「どのような経緯を経て、現在のような状態になったのか?」を考える必要性が存在するものと感じている。

つまり、「なぜ、CDSの価格が低迷しているのか?」について、より詳しい分析を実施すると、実際には、「CDSの需給関係に、大きな変化が発生している状況」が見えてくるのである。具体的には、「CDSを、なぜ、購入するのか?」を考えた場合、その理由としては、「国債価格の暴落を恐れ、保険金を払うような状態」が指摘できるが、現在、必要なことは、「誰が、国債を買っているのか?」を理解することである。

より具体的に申し上げると、「現在、国債の買い手は、ほとんどが世界各行の中央銀行に変化した」という事実を考慮すると、「中央銀行にとっては、CDSを購入する必要性は全く存在しない」という事情が浮かび上がってくるのである。つまり、「中央銀行には『紙幣の増刷』という最後の手段が残されている」という事実により、「国債価格の暴落時に保険の役割を果たすCDS」については、「全く、買う意味が存在しないのではないか?」とも考えられるのである。

その結果として、「CDSの需要」が減少したものと想定されるが、このことは、現在、「財政リスクの警鐘が、CDSではなく、金利に変化した」という事実が指摘できるものと想定されるのである。つまり、「どのような状況下で、財政破綻が発生するのか?」を考えると、実際には、「日銀」を中心にして、「わずかな金利上昇で、中央銀行の破綻が発生し、その結果として、国家の財政破綻につながるリスク」が存在するのである。

そのために、現在、必要とされることは、「最悪の事態を想定し、備えに全力を尽くすこと」だと考えているが、この点については、今回の「コロナ・ショックへの対応」が、大きな反省点とも言えるようである。つまり、「安易な予測により、対策を小出しにする展開」、そして、「事態の悪化を冷静に判断せず、間違った政策を実施しても、決して、反省しない態度」などのことだが、これから想定される「インフレの大津波」については、「デジタル通貨は、コンピューターネットワークの中を流れることができない」という「金融界の白血病」を伴うために、最大の注意を払う必要性があるものと感じている。