本間宗究(本間裕)のコラム

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2021.7.15

ウェルズ・ファーゴの異変

7月9日付けの「ブルムバーグ」では、驚いたことに、「米銀のウェルズ・ファーゴが、既存の個人向け与信枠をすべて閉鎖し、同サービスの新規提供も取りやめる」との報道があった。つまり、「個人向けの貸し出しビジネスから、全面的な撤退を行う状況」のことであり、現在、この点に関して、いろいろな憶測が飛び交っていることも見て取れるが、私自身としては、「FRBの状況からも明らかなように、米国全体で、流動性の不足が発生している状態」だと考えている。

より具体的には、「2008年のリーマンショック」以降、「世界各国の中央銀行は、量的緩和(QE)の名のもとに、デリバティブの処理を実施してきた状況」だったが、現在では、「デジタル通貨の枯渇により、これ以上の処理が難しくなった状況」とも考えられるのである。つまり、従来の「中央銀行が民間から資金を借り入れて、国債の大量買い付けを行い、超低金利状態を維持する方法」が難しくなっているわけだが、この理由としては、「中央銀行の借り入れ」が難しくなった点が指摘できるのである。

別の言葉では、「お金の仕組み」、あるいは、「金融システムのメカニズム」からは、「中央銀行が、『紙幣の増刷』という最後の手段を行使せざるを得ない状況」とも言えるわけだが、この結果として予想される展開は、「金融面の白血病」、すなわち、「紙幣がコンピューターネットワークの中を流れることができない状況」とも考えられるのである。そのために、現在では、「米国のFRBが、リバースレポという短期資金の調達方法により、約1兆ドル(約110兆円)を市場から借り入れている状況」となっており、このことが、今回、「ウェルズ・ファーゴの異変」に繋がったものと想定されるのである。

そして、今後は、典型的な「クラウディングアウト」、すなわち、「国家の資金需要増が引き起こす金利上昇」が想定されるが、この点に関する問題点は、「大量に発行された債券の存在」とも言えるのである。つまり、「国家」のみならず「民間」においても、「大量の借金」が存在するために、「わずかな金利上昇が金利負担を増やし、その結果として、更なる借金を重ねる展開」が考えられるのである。

より具体的には、古典的な「インフレの発生」でもあるが、今回の問題点は、いまだに、「1971年のニクソンショック」から始まった「信用本位制」という新たな通貨制度の存在に気付いていない事態であり、また、今後、この点が理解された時には、「実物資産の調達」が難しくなっている可能性である。