本間宗究(本間裕)のコラム

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2021.5.28

日銀の決算

5月27日に「日銀の決算」が発表されたが、内容としては、「きわめて危機的な状況であり、いつ、国債価格の暴落が発生しても不思議ではない段階」だと感じている。具体的には、「総額が約714兆円(+110兆円)」、そして、「国債の保有残高が約532兆円(+46.2兆円)」であり、また、「当座預金の残高が約522兆円(+127.3兆円)」という状況となっており、このことは、「国債価格の暴落を防ぐために、必死に、国債の買い支えを実施している状況」とも考えられるのである。

別の言葉では、「世界的な金利上昇」に見舞われながらも、辛うじて、「金融システムの崩壊」を防ぐことが可能な状況だったようだが、この指標となる「信用乗数(マネーストック÷ベースマネー)」については、現在、「1161兆円÷650兆円=1.79倍」という状態である。つまり、「ピーク時の約13倍」から「約30年」という時間をかけて、「ハイパーインフレの発生」を意味する「1倍」に近づいた段階であり、今後は、いまだに「約6京円の残高」が存在する「デリバティブ」のバブル崩壊が表面化した時に、「インフレ大津波の到来」となって認識されるものと思われるのである。

より具体的に分析すると、過去1年間の「日銀の実情」は、「約1.1兆円」の「国債からの利息」が「主な収益」となっているが、このために必要とされる「資金手当てのコスト」、すなわち、「当座預金への支払い費用」については、「約2179億円」という「僅かな金額」で済んでいるのである。つまり、「短期金利」が「1%」にまで上昇しただけで、単純計算で、「532兆円×1%=5.32兆円」もの「金利支払い費用」が発生し、「巨額の赤字決算」となることも想定されるのである。

別の言葉では、「日銀の思惑」が「2%のインフレ達成」にあるのではなく、反対に、「できるだけ長期間、超低金利状態を維持すること」にあるものと思われるが、現在では、「国債の買い付け資金を、どのようにして調達するのか?」という大問題が発生し始めているのである。つまり、「当座預金の残高増」については、すでに限界点に近づいており、その結果として、現在では、「クラウディングアウト」という「国家の資金需要急増による金利上昇」が発生している可能性のことである。

しかも、現在、「米国のFRB」においては、「現先オペ」という「「短期資金の借り入れ」により「資金繰りが可能な状況」となっており、そのために、「近い将来、何らかの大事件が発生する可能性」を憂慮すべき段階のようにも感じている。