本間宗究(本間裕)のコラム

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2021.3.13

駆逐され始めた現代の良貨

「悪貨は良貨を駆逐する」という「グレシャムの法則」は、古典的な経済法則でありながら、現在でも、いろいろな局面に応用可能な状況とも言えるようである。具体的には、「質が良く有望と思う資産を手元に置き、反対に、質が悪く見込みがないと思う資産を手放す」という投資行動のことである。そして、結果としては、「市中に流通する通貨や資産の多くが、鐚銭(びたぜに)などと呼ばれる質の悪い硬貨」となるわけだが、今回は、「貴金属市場」で、同様の状況が発生していることが見て取れるのである。

つまり、「銀(シルバー)」を中心にして、現在、世界的に「貴金属の現物」が購入しづらくなっている状況のことだが、この理由としては、「先物」と「現物」との間に、「価格の乖離」が発生している可能性が挙げられるのである。具体的には、「デフレ」を演出したい人々が、「先物取引を利用して、貴金属の価格を実質の需給関係よりも低く抑えていた」という状況のために、「現物に対する需要が強くなり、その結果として、市場から駆逐され、手に入りにくくなった状態」のことである。

別の言葉では、「1971年のニクソンショック」以降、「マネーの大膨張」が未曽有の規模で発生したために、「実体経済」と「マネー経済」との間に、大きな乖離が発生した点も、別の原因として指摘できるものと想定されるのである。つまり、現代人が喜んで保有している「デジタル通貨」については、今まで「良貨」とみなされ、「どのような商品にでも交換可能である」と認識されてきたわけだが、現在では、「現物との交換」という観点において、問題が発生し始めているのである。

より具体的には、「大量のカラ売り」が存在しながらも、「現物の手当て」が難しくなっており、その結果として、今後、「貴金属の価格」が急騰する展開も想定されているが、このことは、「現代の良貨は、いったい、何なのか?」という問題を、現代人に提起しているものと考えている。つまり、「本当に安心して保有できる資産は、ビットコインか、それとも、金(ゴールド)か?」という「問い掛け」のことだが、この点に関する答えは、「どの商品が駆逐されたのか?」を考えることで判断できるようである。

しかも、今後の展開としては、「デジタル通貨」の創造が難しくなった「世界各国の中央銀行」が、一斉に、「紙幣の増刷」を実施し始める状況を想定しているが、この結果として発生する現象は、「未曽有の規模で良貨が駆逐される状況」であり、実際には、このことが、古典的な「インフレ(通貨価値の下落)」を表しているのである。